2239耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート 改訂第2版
3/8
症状・症候のみかたB1011難聴の種類 難聴は外耳・中耳における病変による伝音難聴と内耳以降の病変による感音難聴に分けられる.伝音難聴では純音聴力検査での骨導聴力閾値は正常で気導聴力閾値が上昇する.一側の場合ウェーバー検査では難聴側に偏倚する.感音難聴では骨導・気導聴力閾値が同程度に上昇する.一側の場合ウェーバー検査では健側に偏倚する.感音難聴は内耳障害と蝸牛神経以降の後迷路障害に分けられる.2伝音難聴 診断には外耳道・鼓膜の視診が重要で,これだけで診断されることも多い.顕微鏡下の観察も必要に応じて行う.シーゲルやブリュニング拡大耳鏡で鼓膜を加減圧して動かすと,鼓膜・ツチ骨柄の可動性,加圧時に鼓膜に接してくる構造物,貯留液などの有無がわかる. 鼓膜の異常には穿孔,陥凹,癒着,硬化などがある.中心性穿孔の場合はパッチテストによりある程度中耳の状態が推測できる.パッチにより気骨導差がほとんど消失する場合は中耳・耳小骨に著変はない.聴力が不変の場合は鼓膜の癒着,肉芽・硬化・固着などによる耳小骨・鼓膜の可動性低下が疑われる.鼓膜病変のみで難聴の程度が説明できない場合は側頭骨高分解能CT(HRCT)などにより中耳・耳小骨の状態を調べる. 鼓膜が正常の場合の診断手順を図1に示す.見た目が正常な鼓膜でもツチ骨柄の可動制限がある場合は前ツチ骨靱帯の骨化や上鼓室前・外側壁とツチ骨またはキヌタ骨の固着が示唆される.中耳内の腫瘤性病変や岬角上の血管拡張(耳硬化症でのSchwar-tze sign)などの有無にも留意する. 視診上鼓膜に異常がない場合はHRCTによる画像診断と音響性耳小骨筋反射検査を行う.中耳内に軟部組織がない場合はpartial volume effectがないためHRCTで耳小骨の状態がよく把握できる.中耳内に軟部組織がなく,耳小骨連鎖正常の場合は耳小骨の固着である.ツチ骨柄に可動性のある場合はアブミ骨固着かアブミ骨筋腱の骨化である.アブミ骨固着ではアブミ骨筋反射でon-off反応や逆フレがみられる.耳硬化症と先天性アブミ骨固着症の2つは発症時期である程度鑑別できる.HRCTで内耳周囲,特に前庭窓前方に脱灰巣(時に骨増殖)がある場合は耳硬化症である.先天性アブミ骨固着ではアブミ骨の奇形を伴うDOs 伝音難聴と感音難聴の鑑別には純音聴力検査が必須.一側の場合,ウェーバー検査が役立つ. 伝音難聴の診断には鼓膜所見を正確にとることが重要.正常鼓膜では側頭骨CTや音響性耳小骨筋反射が有用. 内耳性難聴と後迷路性難聴の鑑別には補充現象・疲労現象の有無,語音明瞭度,耳音響放射,ABRが有用. 内耳性難聴の鑑別には,一側か両側か,急性進行か緩徐進行か固定か,単発性か再発・変動性か,などがポイントになる.B 症状・症候のみかた難聴3
元のページ
../index.html#3