2239耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート 改訂第2版
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102ことがある. 中耳内に軟部組織陰影がある場合は,先天性真珠腫,炎症性病変,腫瘍などが鑑別に挙げられる.コレステリン肉芽腫では鼓膜が青色~黒色を呈することもある.その他の腫瘤性病変では手術術式や塞栓術の必要性などを決めるため,HRCTにて周囲骨破壊の有無,進展範囲について,MRIにて腫瘤の性状,造影効果の有無を調べる.3感音難聴a 内耳障害と後迷路障害の鑑別  感音難聴の多くは内耳障害により生じるが,後迷路障害によることもまれではない.両者の主な違いを表1に示す. 内耳障害では耳音響放射は聴力に応じて障害され,軽度難聴では振幅の低下,中等度以上の難聴では消失する.補充現象は陽性のことが多い.語音弁別能は軽度難聴ではほぼ100%であり,中等度以上の難聴では閾値が上昇するにつれ悪化する.一方後迷路障害では耳音響放射は正常であり,補充現象はなく,疲労現象がみられる.語音弁別能は聴力が比較的良好でも著明に悪い. 聴性脳幹反応(ABR)では,内耳障害の場合,軽度~中等度の難聴では音圧を上げると急速に振幅が増大する補充現象を示す.難聴が中等度以上になるとIII波とV波のみになり,さらに閾値が上昇するとV波のみとなる.90~100dB以上の重度の難聴では無反応となる.後迷路障害では障害部位以降の波が出現しないか,振幅の著明減少・潜時の著明延長などがみられる.検査耳小骨筋反射側頭骨CT所見 1)中耳軟部組織陰影 2)耳小骨連鎖鼓膜加圧所見鼓膜正常な伝音難聴アブミ骨筋反射なし軟部組織陰影あり軟部組織陰影なし耳小骨連鎖異常上鼓室固着症,前ツチ骨靱帯骨化など先天性真珠腫,中耳腫瘍,コレステリン肉芽腫など耳小骨奇形,外傷性耳小骨離断など耳硬化症,先天性アブミ骨固着症など耳小骨連鎖正常アブミ骨筋反射ありon and off,逆フレツチ骨柄可動性なしツチ骨柄可動性あり図1 鼓膜正常な伝音難聴の鑑別診断のフローチャート中耳炎術後や中耳炎既往による厚い鼓膜では中耳内の液体貯留による伝音難聴を見落としやすく,HRCTでも瘢痕・肉芽と間違いやすい.Pitfall!

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