2239耳鼻咽喉科・頭頸部外科研修ノート 改訂第2版
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第3章 研修で学ぶべき症状・症候のみかた症状・症候のみかたB103b 内耳性難聴の鑑別診断 内耳障害の場合,検査で病態をある程度診断できるものは内リンパ水腫しかない.このため,難聴が①一側か両側か,②急性進行か緩徐進行か固定か,③急性の場合,単発性か再発・変動性か,などが鑑別診断のポイントになる.また難聴の原因の問診(騒音環境・強大音曝露の既往,聴器毒性薬物の使用経験,家族歴など)が鑑別に有用である(図2). 急性発症の場合,強大音曝露,アミノ配糖体など聴器毒性薬物使用(家族歴に薬剤による難聴者がいる場合はミトコンドリア1555位A→G点変異の可能性),頭部外傷・側頭骨骨折,ムンプス・ハント症候群などのウイルス感染,潜水などの圧外傷や力み・鼻かみなどが原因となりうる.誘因が不明の場合は突発性難聴が強く示唆されるが,メニエール病初回発作や聴神経腫瘍,外リンパ瘻を鑑別する必要がある. 1,000Hz以下の低音域に限局した感音難聴は急性低音障害型感音難聴(ALHL)として別に扱う.ALHLでは耳閉感および自声強聴が主症状のことがあり,耳管狭窄などと誤診しないように注意する.ALHLはその後難聴が再発または変動し(蝸牛型メニエール病),メニエール病に移行することもある.聴神経腫瘍の鑑別には側頭骨X線検査,ABRが有用であり,疑わしい場合は頭部MRIを行う.外リンパ瘻では水の流れるような耳鳴,患側下や懸垂頭位での眼振の誘発,瘻孔症状の有無に注意する. 反復変動する場合は,蝸牛型メニエール病,メニエール病,遅発性内リンパ水腫,自己免疫疾患に伴う難聴,ステロイド依存性難聴,内耳梅毒,前庭水管拡大症などがある.めまいの有無や前庭所見が鑑別診断に有用である.内リンパ水腫の診断にはグリセロールテスト,ラシックステスト,蝸電図が用いられる.これらの検査が陽性の場合は内リンパ水腫が強く示唆されるが,各検査での陽性率は必ずしも高くなく,陰性でも診断を否定することにはならない.小児で頭部外傷などを誘因として聴力が悪化または変動を繰り返す場合は前庭水管拡大症を疑う.診断にはHRCTまたは頭部表1 内耳性・後迷路性難聴の鑑別内耳性難聴後迷路難聴補充現象陽性陰性疲労現象なしありジャーガー分類II(時にIまたはIV)III(まれにIV)耳音響放射反応低下・消失正常語音明瞭度聴力相当に悪化聴力に比べて著明に悪化ABR軽度難聴: 正常またはI波以降の遅延 (I-V波間は正常か短縮) 中等度難聴:III波以降またはV波以降のみ高度難聴:消失障害部位以降の消失または遅延(高度難聴でない場合はMLRやSVRは出現する)聴神経腫瘍による感音難聴の多くは虚血や内耳液組成の変化による内耳障害である.腫瘍が蝸牛神経や脳幹を圧迫してABR波形に異常を生じうるが,これは神経伝達の同期性障害による異常であり,純音聴力検査での閾値上昇が後迷路障害によることを意味しないので注意する.Pitfall!
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