2242原発性アルドステロン症診療マニュアル 改訂第3版
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第3章 診断  B 機能確認検査69●●●Ⅱ 臨床編  第3章 診断検査の種類と特徴 アルドステロン分泌が自律性かつ過剰であることを明らかにする検査である.機能確認検査は機能面から原発性アルドステロン(PA)と診断し,副腎静脈サンプリングの実施適応や治療法の選択など,その後の診療ステップを決定するうえで重要であるが,クッシング症候群におけるデキサメタゾン抑制試験に相当する簡便な単一の検査はない.現在,カプトプリル試験,生理食塩水負荷試験,フロセミド立位試験,経口食塩負荷試験,フルドロコルチゾン食塩負荷試験の5種類があるが,わが国では前4種類の検査が推奨されている1). 各検査の特徴の概略を表1にまとめた.カプトプリル試験2)は実施が簡便で副作用も少ないことから,外来でも実施可能である.生理食塩水負❶ PAにおいてアルドステロン分泌が自律性かつ過剰であることを確認する検査である.❷ カプトプリル試験,生理食塩水負荷試験,フロセミド立位試験,経口食塩負荷試験の4種類が推奨されている.❸ 少なくとも1種類の検査の陽性の確認が推奨されている.❹ 検査間の明確な優劣が明らかでないことから,実施の容易さ,安全性の面からまずカプトプリル試験の実施が推奨されている.第3章 診断――B 機能確認検査国立病院機構京都医療センター臨床研究センター 成瀬光栄国立病院機構京都医療センター内分泌・代謝内科 立木美香機能確認検査 総論1荷試験3)は比較的特異度が高いのが特徴である4, 5).フルドロコルチゾン食塩負荷試験6)と同等の感度,特異度とされる.安価であるが,検査時間が長い.容量負荷による血圧上昇,血清カリウムの低下があることから,コントロール不良の高血圧,腎不全,心不全,重症不整脈,重度の低カリウム血症の患者では施行すべきではない.フロセミド立位試験は歴史的に最も古く,一般的に行われてきたが,循環血漿量の増加に伴うレニンの抑制程度を評価する検査で,アルドステロンの動態を直接評価するものではない.ROC解析によるAUCがARRよりも小さいことが報告7)されており,海外では機能確認検査に含まれない.さらに,利尿薬注射後に2時間立位が必要で患者の身体的負担が少なくなく,低カリウム血症,低血圧,検査中の転倒,意識消失のリスクがあること臨床医のためのPoint1表 機能確認検査の概要機能確認検査感度・特異度陽性判定基準1)特徴・注意点カプトプリル試験【感度】66~100 % 【特異度】68~90 %負荷後(60 分または90 分)ARR>200(またはPAC/ARC>40)副作用:まれに血管浮腫生理食塩水負荷試験【感度】83~83 % 【特異度】75~100 %負荷4 時間後PAC>60副作用:血圧上昇,低カリウム血症禁忌:コントロール不良の高血圧,腎不全,心不全,重症不整脈,重度低カリウム血症フロセミド立位試験【感度,特異度】 データなし負荷後(2 時間)PRA<2.0(または負荷後ARC<8.0)副作用:低カリウム血症,低血圧経口食塩負荷試験【感度】96 % 【特異度】93 %尿中アルドステロン>8 μg/day(尿中Na>170 mEq/day)副作用:血圧上昇,低カリウム血症禁忌:生食負荷試験と同じ.腎不全で偽陰性 PAC:pg/mL,PRA:ng/mL/hr,ARC:活性型レニン濃度(pg/mL)〔日本内分泌学会:わが国の原発性アルドステロン症の診療に関するコンセンサス・ステートメント,日本内分泌学会雑誌2016;92(supp1)より引用〕

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