2246ゴーシェ病UpDate
3/8

29 ゴーシェ病(Gaucher disease)は,本来分解されるべき糖脂質[おもにグルコセレブロシド(gluco-cerebroside)]が蓄積することにより,肝臓,脾臓などの臓器の腫大や,骨髄ではゴーシェ細胞(図1)の増加が認められる.また,脾腫に伴って赤血球,血小板の破壊が亢進し,貧血,血小板減少症などがみられる.骨病変としては,骨髄にゴーシェ細胞が蓄積し,骨髄内の機械的閉塞や,血管攣縮,血栓症,血流障害などによる激しい痛み,局所的虚血性壊死や骨形成プロセスの障害による構造の変形がみられ,骨皮質が菲薄化し,そのため病的骨折や骨髄炎などが発症する.神経症状としては,精神運動発達遅滞,痙攣,項部後屈,開口困難,斜視,呼吸不全などが認められる. ゴーシェ病は発症時期,臨床経過,神経症状の有無により,1型(慢性非神経型),2型(急性神経型),3型(亜急性神経型)に臨床分類される.特に1型は幼児期から成人期にわたり発症し,2型および3型に比べて慢性的に経過する.1型では神経症状を伴わず,肝脾腫(図2),骨病変(図3)が主症状であり,臨床的に幅広い異質性(個人差)を認める. ゴーシェ病はアシュケナージ系ユダヤ人(Ash-kenazi-Jewish)においては600~2,500人に1人と高い頻度が確認されているが,民族性や遺伝性疾患であることが深く関わっており,正確な統計は現在のところ不明である.しかし,2010年のThe Inernational Collaborative Gaucher Group(ICGG)による報告では1),ゴーシェ病の登録症例数は5,710名であり,国別にみると米国1,942名(34%),イスラエル725名(13%),ブラジル551名(10%),英国258名(5%),エジプト207名(4%)であった.正確な統計は得られていないものの,全世界のゴーシェ病患者数は約5,000~10,000名と推定され,わが国では約150名の患者が確認されている. 患者の基本属性は,ICGGの報告(n=5,710名)では,男性が2,669名(47%),女性が3,041名(53%)と男女比はほぼ同等であった1).病型分類(n=5,458名)は,1型が5,005名(92%),2型が62名(1%),3型が391名(7%)であり,全体として9割以上が1型であった1).これに対して,わが国では1型が35.3%,2型が31.4%,3型が33.3%という報告があり2),諸外国に比べて1型の割合が低く,神経症状を伴う2型および3型の臨床症状発症頻度C 臨床症状21型ゴーシェ病名古屋セントラル病院ライソゾーム病センター・血液内科 坪井一哉図1ゴーシェ細胞メイギムザ(MG)染色(×1,000).細胞内のライソゾームにグルコセレブロシドなどの糖脂質が蓄積し,細胞質が濃青色に染まる大型の細胞である.特に細胞質にはひっかき傷のようなシワや,白く淡く抜けるような所見が認められる.

元のページ 

page 3

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です