2246ゴーシェ病UpDate
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C臨床症状2 1型ゴーシェ病31どの臨床症状は比較的軽度と報告されている5).この変異において神経症状は稀である.わが国では重篤な臨床症状を引き起こすL444Pの変異が40.6%にみられ,また日本人に特有のF213Iの変異が10.9%に認められたと報告されている6).ともに神経症状を伴う重篤な臨床症状を引き起こし,遺伝子変異と臨床症状の相関は現在多くの症例で検討され,徐々に明らかにされてきている1,5,6).1 酵素補充療法(ERT) ゴーシェ病は,細胞内ライソゾーム内の加水分解酵素であるグルコセレブロシダーゼが遺伝的に欠損,または活性が低下しているために糖脂質(おもにグルコセレブロシド)を分解できなくなり,肝臓,脾臓,骨髄などにグルコセレブロシドが蓄積する疾患である.酵素補充療法(enzyme replacement therapy;ERT)は,この欠損している酵素を製剤化して体外から点滴で補充し,蓄積したグルコセレブロシドを分解,代謝する治療法である. 現在,わが国では治療薬としてイミグルセラーゼ(imiglucerase)(セレザイム®,ジェンザイム社)とベラグルセラーゼアルファ(velaglucerase alfa)(ビプリブ®,シャイアー社)の2つの薬剤が承認され,これまでに約150名の患者が治療を受け,ヘモグロビン濃度,血小板数,肝臓・脾臓容積の改善が認められている4).特に1型ゴーシェ病においては標準的治療法として確立されてきている7).しかし,骨病変に関しては一部で改善が報告されているものの,骨痛や病的骨折などを含め,十分な治療効果は得られていない.今後のさらなる検討が必要であると考えられる.2 骨髄移植 わが国では,1986年にゴーシェ病患者(2歳女児)に対して,初めて骨髄移植が実施された.その後,1992年に国内で骨髄移植が保険適用となり,現在までに4例で実施されている.先天代謝異常症の骨髄移植はすでに症状が進行している成人例では効果を期待できないことが多く,移植が行われた4例はいずれも低年齢時に行われている.骨髄移植が成功すれば肝脾腫,血小板減少,骨痛などの症状の改善が期待されるが,1型ゴーシェ病に関してはERTの安全性,有効性が認められており,移植療法の適応については慎重な検討が必要である.3 基質合成抑制療法(SRT) 基質合成抑制療法(substrate reduction therapy;SRT)は内因性酵素の活性の低下と基質とのバランスをとるために基質合成を阻害する治療法であり,1型ゴーシェ病に対して臨床試験が実施され,ミグルスタット(miglustat)(Zavesca®,アクテリオン社)として,2003年にEUとカナダ,2004年に米国で承認された.ミグルスタットの適応は,症状が軽~中等度の1型ゴーシェ病の成人例で,何らかの理由(アレルギーや過敏症,静脈確保が困難等)によりERTが適応とならない患者に限局されているものの,イミグルセラーゼによるERTとの併用療法での効果が確認された.ミグルスタット(ブレーザベス®)は日本ではニーマンピック病C型(Niemann-Pick disease type C;NPC)への適応が承認されているが,ゴーシェ病に対しては未承認である.また,別の基質合成阻害薬であるエリグルスタット(eliglustat)(サデルガ®,ジェンザイム社)は1型ゴーシェ病患者に対する有効性,安全性が確認され,2014年8月に米国で承認された.日本では2015年3月に承認されている. 1型ゴーシェ病に対するERTでは,貧血,血小板減少症,肝脾腫などの改善を評価項目とし,これらに対するバイオマーカーや臨床検査値の指標を3か月毎にモニタリングする.骨病変については長期の治療が必要になるため,1~3年毎に検査する.その効果判定には単純X線検査だけでは不十分で,大腿骨などのMRIが有用である.また,骨密度測定,二重エネルギーX線吸収測定法(dual energy X-ray absorptiometry;DXA法)が有用な場合もある.治療を変更する場合(投与量を変更する場合)や個々の患者の状況によって,モニタリングの間隔を変更することがある.治 療1型におけるモニタリング項目
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