2255ライフサイクルに沿った 発達障害支援ガイドブック
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35第2章 ライフサイクルに沿った具体的な治療と支援1 注意欠如・多動症(ADHD)―b 思春期・青年期における課題と支援ADHDASDLD幼児期学童期思春期青年期壮年期老年期 ADHD,思春期心性,学習面の課題,友人関係の課題,非行 DSM⊖5によると,注意欠如・多動症(attention⊖deficit⊘hyperactivity disorder:ADHD)の有病率は子どもでは5%,成人では2.5%である.この値が正しければ,約半数のADHD児が子どもから成人になる期間に診断基準を満たさなくなっていると考えられる.確かに小学校低学年時代には授業中離席が目立ったADHD児も,小学校高学年や中学生になれば着席をしていることが多い.そういった点では思春期になるとADHDの中核症状は落ち着いたかのようにみえる.しかし一方で,学業成績の不良や自尊感情の低下から生じるさまざまな問題を主訴に思春期以降にはじめて医療機関を訪れる子どもも多く,それらは中核症状の改善とは相反しているように感じられる. Biedermanら1)は,DSM⊖III⊖Rの診断基準でADHDの子どもたち128名の症状を4年以上にわたり5回評価し,年齢による変化を観察している.寛解を診断的寛解(14項目のうち8項目未満),症状的寛解(5項目未満),機能的寛解(機能の全体的評価〈GAF〉尺度が60以上)に分けると,19歳までに診断的寛解は62%にものぼったが,症状的寛解は28%,さらに機能的寛解は10%程度しかいなかったと報告している.また同じ報告では,多動性は9~11歳,衝動性は12~14歳に診断的寛解に至るが,不注意は20歳以上でも診断基準を満たしていることが多いと述べられている. 以上のことから,思春期以降のADHDでは学童期に問題行動の原因になるような中核症状は改善傾向にあるが,家庭や学校における社会生活には困難が持続していることがわかる.そう考えると,残存する社会生活の困難はもはやADHDの中核症状に直接起因するものというよりは,多くが児童期までに中核症状がもたらした不具合の積み重ねによる二次的な障害であり,さらに思春期以降の多くの症例で生活機能不全が b 思春期・青年期における課題と支援 1 思春期・青年期におけるADHD1注意欠如・多動症(ADHD)

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