2256低形成・異形成腎を中心とした先天性腎尿路異常(CAKUT)の腎機能障害進行抑制のためのガイドライン
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1 総 論7腎尿管の発生と機能獲得 腎臓の発生は,胎生4週に尿管芽が後腎間葉内に侵入して始まる.後腎間葉が尿管芽の分枝・伸長を促進し,尿管芽が後腎間葉の分化を促す相互誘導作用により発生過程が進展する.尿管芽の先端は繰り返し分岐し集合管を形成する.枝分かれした集合管は拡大融合して大腎杯を,引き続き分枝した集合管は融合して小腎杯を形成する. 一方,尿管芽に誘導された後腎間葉は間葉-上皮転換によって上皮化し管状構造を形成する.管は後腎胞,C字体,S字体へと形態を変化させ,近位端は陥凹し,内部に毛細血管が流入し糸球体が形成され,一方,遠位端は集合管と融合する.こうして糸球体,近位尿細管,遠位尿細管,集合管からなるネフロンが形成される.糸球体数は胎生10~18週の間に徐々に増加し,32週までその数は急速に増加して上限に達する.最終的にはひとつの腎臓につき40万~200万個のネフロンを有するに至る. 胎児期の腎臓は超音波検査によって胎生15週頃から観察が可能となり,胎生20週には腎実質内部も明瞭に観察される.尿産生は胎生9週頃に始まるが,胎生16週までは尿が羊水産生にほとんど関与しないため,羊水量が腎機能を反映するのは胎生16週以降である. 出生後,腎長軸径は近位曲尿細管の伸長と間質の増生によりほぼ直線的に増加する.新生児の糸球体サイズは65~70 µmであるが,1歳で90~110 µm,成人で130~170 µmと大きくなる.腎臓の位置変化 後腎は腎門部を腹側に向け両側が接近して仙骨腹側に形成される.腹部骨盤部の成長に伴って腎門部が約90°内側に回転しながら相対的に腹部へ上昇し,胎生9週までに後腹膜腔に位置する.膀胱と尿道の発生 総排泄腔が背側の直腸と腹側の尿生殖洞に分割され,尿生殖洞から膀胱が形成される.尿生殖洞の骨盤部は男児では膀胱頸部と前立腺部尿道が,女児では全尿道が形成される.中腎管の尾側端は膀胱三角部を形成し,中腎管の退縮につれて尿管が膀胱に開口する. 尿管芽と後腎間葉の相互誘導作用により発生過程が進展する.後腎間葉からGDNF(glial cell line-derived neurotrophic factor)が分泌され,中腎管に発現するRETに作用して尿管芽を後腎間葉内に誘導し分枝・伸長させる.GDNFの発現は,EYA1,PAX2などの転写因子によって促進的に,BMP4によって抑制的に制御され,その結果,尿管芽の分枝が正確に行われる. 一方,ネフロンに分化する過程には間葉-上皮転換が重要である.後腎間葉に発現するWNT4が促進的に,SIX2が抑制的に働くことで分化が制御されている. CAKUTの病因は単一ではなく,染色体異常を含む遺伝的要因や環境因子などが複数関与しているとされる7~10).低形成・異形成腎の15%は遺伝子異常を病因とするが8),大部分のCAKUTの病因は不明である.母体の環境因子として,コカイン,エタノール,ゲンタマイ123腎尿路の発生の分子メカニズム3,6) 2CAKUTの病因 3

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