2256低形成・異形成腎を中心とした先天性腎尿路異常(CAKUT)の腎機能障害進行抑制のためのガイドライン
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1 総 論9b)病因 後腎間葉細胞からのネフロンの発生が胎生期途中で停止することを病因とする5).c)臨床像 低形成腎と診断するためには異形成成分がないことを組織学的に示す必要があるため,異形成腎との鑑別は困難であるが,軽度の低形成腎は腎臓超音波検査で皮髄境界を認める点で異形成腎と異なる.一般に低形成腎は異形成腎と異なり下部尿路の閉塞などの尿路異常を伴わないとされている.低形成腎の大部分は両側性に発生し,しばしば多発奇形症候群,Down症候群,脳奇形に合併する16). oligomeganephroniaは,組織学的にネフロンの分布が疎で,正常の2倍以上に及ぶ糸球体肥大を特徴とする17).過剰濾過のため糸球体が肥大し,分節性硬化を認め,漏出する蛋白などの再吸収により尿細管も肥大拡張している16,17)(図2).早産児18,19)やsmall for gestational age(SGA)児19)はネフロン数の少ないoligonephropathyで出生し,早産児の修正38週時の腎容量はoligonephropathyを反映して,正期産児の出生時腎容量よりも小さく,糸球体濾過量も低下していることが報告されている20).oligonephropathyが成人期のCKD,高血圧や心疾患のリスクにつながることが注目されている18,19).異形成腎a)定義 尿管芽や後腎間葉細胞の異分化により,嚢胞や,軟骨,平滑筋など腎実質には本来存在しない間葉系組織を含むものである.一側のことも両側性のこともあり,腎瘢痕など二次性の矮小腎とは区別される.b)病因・病態 一般に間葉細胞は多分化能を有し,骨,軟骨,脂肪,皮膚,筋肉などに分化しうる.しかし,ネフロン形成過程では,間葉細胞の分化は間葉-上皮転換によって制御され,間葉細胞から骨や軟骨が形成されることはない.ヒトの異形成腎の原因は不明であるが,動物モデルでは在胎早期に羊の尿管を結紮すると異形成腎を呈すること,臨床的にもしばしば閉塞性尿路障害を伴うことから,異形成腎の発生には尿路閉塞が深く関与していると考えられる16).3oligomeganephroniaの組織所見A:肥大した糸球体が疎らに分布し,肥大拡張した尿細管を伴っている.全硬化し萎縮した糸球体(▶)が散見される.B:肥大した糸球体.係蹄には分節性硬化(➡)を認める.図2 図2 oligomeganephroniaの組織所見 図2 oligomeganephroniaの組織所見 AB

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