2256低形成・異形成腎を中心とした先天性腎尿路異常(CAKUT)の腎機能障害進行抑制のためのガイドライン
7/8

1 総 論11いこと等から本ガイドラインではCAKUTとは別の概念として定義する.しかし特に低形成・異形成腎と混同されていることも多いかと思われるため,本項では解説しておく.a)定義 RTDは近位尿細管の形成不全を特徴とし,弓状動脈から輸出細動脈までの動脈壁肥厚を伴うまれな先天性腎疾患である.b)病因・病態 レニン・アンジオテンシン系の障害による腎血流の低下により近位尿細管形成不全を呈することが考えられている22).原因はrenin,angiotensinogen,angiotensin converting enzyme,angiotensin II receptor type1の遺伝子(それぞれREN,AGT,ACE,AGTR1)に異常を認めることや23,24),続発性に双胎間輸血症候群,先天性ヘモクロマトーシスやレニン・アンジオテンシン系抑制薬の胎児期曝露により発症することが報告されている22).RTDは組織学的に近位尿細管の数が乏しいことで診断される.尿細管形成不全のため,係蹄が大きく展開した糸球体同士が接近して分布する.皮質域の遠位尿細管は代償性に肥大し,髄質域のヘンレループは萎縮し,集合管は虚脱し間葉組織で囲まれている24,25).c)臨床像 多くが重症例でPotter症候群を呈し新生児期に死亡する.遺伝性と続発性RTDの臨床像は類似し,胎生期の羊水過少,出生後の腎不全,頭蓋冠低形成(大泉門過開大),新生児期の重篤な低血圧を特徴とする.また,新生児期以降に,高度な動脈-細動脈病変のため腎血管性高血圧を呈する症例もある22). 羊水の主成分が胎児尿となる20週以降に発症した羊水過少で,腎の大きさ・形態に大きな異常を認めない場合にはRTDを疑う.遺伝性RTDでは胎児の成長は正常で,一方,続発性では発育遅延を認めることが多い.軽度から中等度の臨床経過で新生児期を過ごしたRTDのなかには低形成・異形成腎と混同されている症例が少なくないと考えられる22).左多嚢胞性異形成腎の画像所見A:腎臓超音波検査所見:左腎は小さく,辺縁不整である.腎実質は薄く高輝度で皮髄境界が不明瞭である.複数の嚢胞を認める.B:腎MRI T2強調画像:左腎は小さく実質を認めない.複数の嚢胞を認める.図4AB

元のページ 

page 7

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です