2258これならわかる!小児科診療に活かせる遺伝学的検査・診断・遺伝カウンセリングの上手な進めかた
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171遺伝学的検査を実施する際の留意点な特徴がある.①生涯変化しないこと.②血縁者間で一部共有されていること.③血縁関係にある親族の遺伝型や表現型が比較的正確な確率で予測できること.④非発症保因者(将来的に発症する可能性はほとんどないが,遺伝子変異を有しており,その変異を次世代に伝える可能性のある者)の診断ができる場合があること.⑤発症する前に,将来の発症をほぼ確実に予測することができる場合があること.⑥出生前診断に利用できる場合があること. これらの特長は,すでに発症している患者の診断を目的として行われる遺伝学的検査については,一般の臨床検査とほぼ同様に実施することができるが,非発症保因者の診断や出生前診断を目的に行われる遺伝学的検査については,遺伝学的検査の特性を十分に考慮する必要があることを示唆している.aすでに発症している患者の診断を目的として行われる遺伝学的検査(図2) 前述のとおり,この場合の遺伝学的検査は他の診断を目的とした臨床検査と同様に扱われる.遺伝学的検査の検査前説明と同意の確認は原則として主治医が行う.主治医は,遺伝学的検査の結果を一連の診療の流れのなかでわかりやすく説明することが要求される. これまで,遺伝学的検査の結果が血縁者に与える影響を考慮して,検査を受けるか否かの意思決定を自律的に行うことが強調されてきた.しかし,近年の医療の進歩により早期診断・早期治療が患者の予後を大きく変えることができる遺伝性疾患の数も増えてきた.そのような背景を考慮すると,“自律性”を強調しすぎて診断時期を遅らせることが患者の利益につながらない場合も生じている.早期診断・早期治療が重要と判断される場合は,主治医は速やかに診断することの重要性を特に強調し,積極的に遺伝学的検査の実施を促すことも必要である. 一方,依然として,治療法のない疾患も多数存在する.患者にとってのメリットが高くない疾患の確定診断のために遺伝学的検査をする場合は,その血縁者に与える影響を十分に考慮すべきであり,必要に応じて遺伝カウンセリングを検査前に実施することも考慮すべきである.遺伝学的検査と遺伝子検査の概念遺伝学的検査には,遺伝子検査による遺伝学的検査のほかに遺伝生化学的検査も含まれる.これに対して,病原体遺伝子検査やヒト体細胞遺伝子検査は,遺伝学的検査には含まれない.図1遺伝学的検査遺伝子検査遺伝生化学的検査病原体遺伝子検査ヒト体細胞遺伝子検査

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