2260小児けいれん重積治療ガイドライン2017
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各論 CQ225につながっている(ただし,ミダフレッサⓇの鼻腔内,頰粘膜,筋注投与は適応外使用である.また,ミダフレッサⓇは10mg/10mLの製剤であるため,用量が多く実際の使用は困難).DZPは脂溶性で浸透圧比が約30であり,点滴ルート内での沈殿・混濁や血管痛,持続静注による維持ができない,という欠点を有している.両者共に副作用として呼吸抑制に注意して使用する必要がある.特に病院前治療でDZP坐剤などが使用されている場合は投与量,投与スピードに注意する必要がある.なお,海外でのMDL持続静注は難治性けいれん重積状態治療に対する全身麻酔療法として評価されており,初回治療での発作抑制効果維持としての使用法には言及されていない.日本での第一選択は,MDLあるいはDZPの静脈投与となる.初回投与無効例に対して何回まで反復投与するかに関して,発作早期抑制と呼吸循環動態への有害事象の検討から,欧米のガイドラインでは5分間おいて1回反復使用まで,と規定されている.DZP(0.3~0.5mg/kg)もしくはMDL(0.1~0.3mg/kg)を投与し,5分経過して発作消失が得られなければ2回目を試みて,無効と判断すれば他の薬効をもつ第二選択薬治療に移行する.なお,DZPの用量について,欧米のガイドラインではCapovilla4)(Italy)が0.5mg/kgと規定している以外は0.1~0.3mg/kgの範囲で規定されている.日本でのDZP用量規定の歴史的根拠は不明であるが,成書や総説等の記載を参考とし,実臨床で使用されている用量とした.てんかんの診断がすでについている症例では,一般的な1次,2次救急施設と,ICUやHCUを有する3次救急施設では治療の選択肢が異なってくる.特に前者の場合は,各々の施設でどこまで治療を行うかを設定しておき,抑制困難と判断したら速やかに高次機能施設へ転送できる連携システムを構築しておくべきである.ジアゼパム静注SEに対するDZP静注に関する海外の前方視的研究8-15)では,1回用量は0.2~0.3mg/kgが多く,有効率は低い結果としてAppleton8)の64.7%,Thakker14)の65.2%があり,その他では70~100%であった.最も新しく,症例数の多い(140例)報告であるChamberlain15)は3か月から18歳の小児を対象として,多施設のERにおいて二重盲検比較対象試験をLZPとの比較で報告している.対象例は熱性けいれんが35.0%,急性症候性16.4%,遠隔症候性9.3%,特発性26.4%であり,小児のけいれん重積の原因をほぼ網羅している.有効率は72.1%であった.熱性けいれんを対象としたLahat9)は26例中24例で有効としている.有効性は静注開始後5~10分以内の発作収束としているが,静注開始から発作収束までに要する平均時間はおおむね2~3分であった.静脈ルートを確保するために数分を要することがあり,最近の非経静脈的MDL治療と比較して有効性に差を認めないが,治療開始から収束までに数分長くかかることが課題である.有害事象としてAppleton8)では20.6%に呼吸補助を要し,Chamberlain15)では16%に呼吸

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