92●●●Ⅲ 臨床編診断の手順 本症の診断の手順を示す(図1).成長ホルモン(growth hormone:GH)の分泌過剰が原因で,顔貌変化や体型の異常を呈するため,特徴的な先端巨大症様顔貌(下顎,眉弓の突出),身体変化(四肢末端の肥大,巨大舌など)を見落とさないことである.本症を疑えばまず,副症候を確認,次いで血中GH値,インスリン様成長因子I(insulin-like growth factor I:IGF-I)値を測定してGHの過剰分泌を証明する.しかし,高血圧が身体変化に先行する場合もあるので,軽微な症候であっても積極的に疑うことが重要である.疫 学 先端巨大症患者数は人口100万人当たり50~70人と推定される.性差はみられない.年齢は10~70歳代までに広く分布する(17.5~57%)が,40~65歳の間に最も多い. 本症における高血圧の合併は頻度が高く,一般人口と比べ有意に高い.性差はなく,本態性高血圧患者と比較し平均年齢(53歳)は低い1).病 態 GHが直接的あるいはIGF-Iを介して間接的に腎近位尿細管でのNaの再吸収を亢進させる結果,循環血漿量や総Na量が増加するため,体液量依存性高血圧をきたすとされる.その他合併する耐糖能異常や脂質異常症により動脈硬化や睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)をきたし,高血圧を生じるとされている.症 候 顔貌変化,手足の容積増大が特徴的である.また,発汗亢進や皮膚の肥厚も頻度が高い.女性では月経異常の頻度が高い.このほか,頭痛,高血圧,手足のしびれ,心肥大,性欲低下,視力・視野障害などがみられる.本症では内臓肥大がみられることが多いが,特に心肥大は2⊘3の症例で合併する2).また,腺腫様甲状腺腫,変形性膝関節症,悪性腫瘍(特に大腸癌),SASを合併しやすい. 本態性高血圧患者と比較し,本症に合併する高血圧の特徴として,①拡張期高血圧が多い,②高血圧の家族歴が乏しい,③心肥大や耐糖能異常(65%)の合併が多い,などがあげられる1).高血圧の程度は罹病期間と相関する一方,IGF-Iレベルとの関連性は低い.身体所見 本症の特徴的な身体所見として,①顔貌変化(眉弓部の膨隆,下顎の突出,鼻翼,口唇や舌の肥大),②手足容積の増大(手袋,指輪,靴のサイズ第2章 各 論―A 下垂体疾患1先端巨大症先端医療センター病院 平田結喜緒臨床医のためのPoint❶先端巨大症に高血圧を合併する頻度は比較的高い.❷心筋肥大を伴うことが多く,無治療で放置すると心不全になることがある.❸先端巨大症の治療により高血圧は改善することが多い.高血圧先端巨大症の主症候(表1-I) ○1手足の容積増大 ○2先端巨大症様顔貌 ○3巨大舌いずれかを認めるスクリーニング副症候(表1-III)の確認 血中GH値,IGF-Iの測定高値精査内分泌検査・画像検査 ・75g 経口ブドウ糖負荷試験 ・下垂体CT/MRI ・頭蓋骨/手足の単純X線先端巨大症の診断先端巨大症診断の手順1図
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