2262褐色細胞腫診療マニュアル 改訂第3版
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第2章 悪性褐色細胞腫  B 治療103●●●Ⅱ 臨床編  第2章 悪性褐色細胞腫 米国National Cancer Instituteデータベース 米国National Cancer Instituteはホームページ上で褐色細胞腫に関するデータベース(Physician Data Query : PDQ)を紹介している(http://www.cancer.gov/cancertopics/types/pheochromocytoma).この中では,局所性褐色細胞腫で所属リンパ節転移または局所浸潤を認め手術で摘出不可能な症例や,転移性褐色細胞腫,再発性褐色細胞腫のカテコールアミン過剰症状を緩和する目的で,CVD療法が選択肢の一つとしてあげられている.CVD療法の実施法1適応と前処置 転移性あるいは再発性で外科的切除が困難な悪性褐色細胞腫のうち,後述する副作用を考慮し,全身状態が不良でない症例,施行前に重篤な白血球減少,血小板減少,腎機能障害,肝機能障害の合併がない症例を対象とする.CVD療法の効果による腫瘍崩壊でクリーゼを併発する症例は稀であるが数例の報告があるため8),事前に十分な量のα,β遮断薬を投与する.2投与量と投与法 Averbuchら1)のプロトコールではシクロホスファミド(750 mg/m2 BSA)を1日目,ビンクリスチン(1.4 mg/m2 BSA)を1日目,ダカルバジン(600 mg/m2 BSA)を1日目と2日目に投与する.これを21日間隔で反復する.シクロホスファミドとダカルバジンの投与量は骨髄抑制が生じるまで毎回10%ずつ増量,血液所見や神経学的副作用が出現した場合は施行間隔を1週ずつ延ばすか投与量を減量する(図1).わが国ではビンクリスチンの添付文書に「副作用を避けるため1回量2 mgを超えないものとする」と記載されている.副作用と対策 副作用発現頻度は不明であるが,ほとんどが軽~中等度で,全身状態が良好な症例では重篤な副作用の報告は稀である.重篤な副作用としてクリーゼに留意する.副作用は必ずしも全例で出現するものではない.また,反復して施行する場合は,毎回出現する副作用の種類や程度が異なる症例がみられるため慎重に経過を観察する.長期間反復して投与した際の慢性副作用は明らかではないが,二次性悪性腫瘍の発生が考えられるので注意を要する.1発熱,血管痛,嘔心,嘔吐 投与中および直後に副反応と考えられる高熱を認めることがあるので,対症的処置を行う.局所の血管痛はダカルバジンの代謝物質が疼痛物質であるために生じる.ダカルバジンの代謝は紫外線で促進されるため,点滴薬調整から点滴投与中は遮光する.疼痛は投与終了後に速やかに軽快するが,時に激痛の訴えがある.著しい血管痛は治療に対する恐怖心につながるため,訴えが強い場合は消炎鎮痛薬,抗不安薬の事前投与を行う.嘔心,嘔吐は多くの例で投与終了後に速やかに軽快する.制吐薬としてグラニセトロン塩酸塩(5-HT3受容体拮抗薬)を使用する.抗ドパミン作用を有するメトクロプラミド(D2受容体拮抗薬)は内服薬も注射薬も褐色細胞腫に対する使用が禁忌である(急激な昇圧をきたす可能性がある).同じD2受容体拮抗薬であるドンペリドンには禁忌の記載がないが使用には注意を要する.2骨髄抑制(おもに白血球減少,その他に血小板減少,貧血),末梢神経障害 シクロホスファミドとダカルバジンによる骨髄抑制が報告されている.白血球減少は投与の数日後から出現し,約1週間で回復する例が多い(図2).その他,血小板減少による軽度の出血傾向が報告されている1).ビンクリスチンによる末梢神経障害として軽度の知覚異常が報告されている.3肝機能障害,脱毛 投与後数日から軽度のトランスアミナーゼ上昇,軽度の脱毛を認めることがある.4褐色細胞腫クリーゼ CVD療法の効果で腫瘍が崩壊しクリーゼを併発する症例は稀であるが,数例の報告があるため8),事前に十分な量のα,β遮断薬を投与する.1図 CVD療法の実施方法(プロトコール)1クール2クール3クール4クールCVDCVDCVDCVDシクロホスファミド(750 mg/m2 BSA)ビンクリスチン(1.4 mg/m2 BSA)ダカルバジン(600 mg/m2 BSA)ダカルバジン(600 mg/m2 BSA)休薬(約3週間)1クールday 1day 2day 23全身評価血液一般内分泌学的検査画像検査○○(○)○○○(○)○○(○)○○○○○○○○○○

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