2262褐色細胞腫診療マニュアル 改訂第3版
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第3章 特殊な条件下における診断と治療119●●●Ⅱ 臨床編  第3章 特殊な条件下における診断と治療子宮内発育遅延との関連が報告されており注意が必要である.α遮断薬で血圧コントロールが困難な場合にはCa拮抗薬を併用するが,多くの薬剤が妊婦への投与は禁忌である.2011年6月からニフェジピンは妊娠20週以降であれば治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与可能となった.アンジオテンシン受容体拮抗薬,アンジオテンシン変換酵素阻害薬は妊婦への投与は禁忌である.高血圧クリーゼを呈した場合には,フェントラミンの静脈投与が第一選択で,降圧不十分であればニカルジピンの静脈投与を検討する.妊娠症例において,どこまで血圧を下げるべきかについては議論があるが,過度の降圧は子宮胎盤血流の低下の危険があり注意する.2外科的治療 手術を行う時期は診断された妊娠週数により異なる.妊娠24週以前に診断された症例では,妊娠中期は自然流産の可能性が低く,子宮もそれほど大きくないため手術を安全に行える可能性が高いことから,妊娠中期までに腫瘍摘出術の施行を推奨する報告が多い1, 7).妊娠24週以降に診断された症例は,腫瘍摘出術は行わず,胎児が分娩後も生存可能と判断されるまで内科的治療を行った後,分娩する.分娩は自然分娩のほうが帝王切開よりも母体の死亡率が高い(31%vs. 19%)ことから,帝王切開が推奨される8).その後腫瘍摘出術の時期については,帝王切開と同時,あるいは分娩とは別に施行,のいずれでもよいとされる.分娩時とは別に腫瘍摘出術を施行する利点として1表 妊婦に対する降圧薬投与についての添付文書上の記載降圧剤妊婦に対する投与についての添付文書上の記載α遮断薬ドキサゾシン (カルデナリンⓇ)治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与プラゾシン (ミニプレスⓇ)テラゾシン (バソメットⓇ)ウラピジル (エブランチルⓇ)フェントラミン (レギチーンⓇ)β遮断薬アテノロール (テノーミンⓇ)治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与プロプラノロール (インデラルⓇ)緊急やむを得ない場合以外は投与しないことが望ましいメトプロロール (セロケンⓇ)禁忌αβ遮断薬ラベタロール (トランデートⓇ)治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与カルベジロール (アーチストⓇ)禁忌Ca拮抗薬ニフェジピン徐放剤 (アダラートCRⓇ)妊娠20週未満は禁忌.妊娠20週以降において,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与ニカルジピン注射液 (ペルジピン注射液Ⓡ)治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与アムロジピン  (アムロジンⓇ, ノルバスクⓇ)禁忌シルニジピン (アテレックⓇ)中枢性交感神経抑制薬メチルドパ治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与血管拡張薬ヒドララジン塩酸塩治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与

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