2264症例から考える針筋電図
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60Ⅱ.基本症例編球脊髄性筋萎縮症の筋電図所見❶球脊髄性筋萎縮症の筋電図所見の特徴 SBMAの神経伝導検査での運動神経障害はあまり特徴的ではない.CMAP振幅の軽度低下以外にはF波の導出率不良,H波の導出不良がある程度で臨床的に障害の目立つ近位筋とは対照的である.一方で運動神経だけでなく感覚神経障害(neuronopathy)も起こることが知られており,SNAP低値が手がかりになることがある.特に腓腹神経でのSNAPの低下は高率にみられる5).ALSが疑われている症例でSNAPが低ければSBMAも考慮すべきである6).しかし,リピート数が多いとかえって感覚神経障害は目立たないこともあるため注意が必要である4).CAGリピートが47回未満の症例では,CMAP振幅低下が軽度である一方でSNAP振幅がより低い傾向があり,リピート数が多いと逆に保たれるとされている.本症例でも57回とリピート数が多かったためかSNAP振幅は保たれていた. 針筋電図では緩徐進行性の慢性神経原性変化そのものといってよい変化が確認できる.随意収縮時に導出できるMUPは十分に代償された高振幅・長持続時間のものが主体で,動員は著しく遅延しており干渉波の形成も不良で単一のMUPが高頻度で連続発火する“single oscillation”や“picket fence pattern”となる.慢性経過のため神経再支配された運動単位がきわめて大きく,筋力の減少も目立たない場合は針を刺入して初めて変化が明らかになることもあり,本疾患に限っては筋力低下が目立たない筋であっても検索対象としてもよい.このような高度に代償されたMUPが筋力低下のない筋でみられる外傷以外の疾患としては,SMA(spinal muscular atrophy:脊髄性筋萎縮症)やPPMA(post-polio muscular atrophy:ポリオ後筋萎縮症)があり,筋電図施行医は知っておくべきである(一般にALSでは十分に代償する前に当該運動ニューロンも障害されるため,polyphasiaは目立つもののgiant MUPは必ずみられるわけではない.症例6参照).安静時では障害の程度に応じて線維自発電位や陽性鋭波などの自発放電がみられるが目立たないこともある. 一方でfasciculation potentialは特徴的で,本疾患のhall markである.肉眼的に観察されるfasciculationは真のfasciculation(筋電図でfasciculationpotentialとして捉えられる,自発的に不規則に放電する単一の運動単位の収縮)とcontractionfasciculation(神経再支配が高度に進み,単一運動単位が多くの筋線維で構成されるようになったために,随意収縮に際して個々の巨大化した運動単位の活動が収縮として皮膚上から見える現象.随意収縮を意図していなくても脱力が困難で出てしまうことは多い)の両方をみており,前者と後者の鑑別は難しい.Contraction fasciculationは,慢性の神経原性変化によって運動単位に属する筋線維の本数(神経支配比)が神経再支配によって著明に増大していれば出現するため,頸髄症性筋萎縮症をはじめ,慢性神経原性疾患であればどの疾患でもみられ特異性はない.対応する筋電図所見はMUPである.一方で真のfasciculationは運動神経の興奮性増大を反映しているため,ALSをはじめとした運動ニューロン疾患のほか,

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