2264症例から考える針筋電図
13/15

61症例4:GiantMUP4Ⅱ基本症例編多巣性運動ニューロパチーや放射線腕神経叢炎,Isaacs症候群,神経根障害など比較的限られた疾患で認められる.対応する筋電図所見はfasciculation potentialである.Fasciculation potentialは複数の起源が想定されているが,多くは軸索末端からの活動電位が逆行も含めて伝搬するため,随意収縮で得られるMUPとは形態が異なることが多い.また発火パターンが随意収縮とは明らかに異なり,すこし群発する傾向はあるものの基本的には不規則発火である.一方でcontractionfasciculationの本体であるMUPは5Hz未満での発火は困難であり,また,軽度の随意収縮を指示すると同じ波形が動員されてくること,拮抗筋の収縮を命じると消失することから鑑別できる(症例5参照).SBMAでみられる姿勢時の手指振戦,挺舌時の舌のうごめきはcontraction fasciculationであるが,波形図4–1のように針筋電図や超音波を用いるとALSより放電頻度が少ないもののfasciculation potentialやmyokymiaが確認できる.SBMAにおけるfasciculationは病初期における軸索興奮性の増大と関連しているとされており,疾患そのものの機序に密接につながっていることから重要な所見と考えられる7).❷いわゆるgiant MUPについて 長持続電位(long-duration MUP)は,①運動単位内で筋線維密度が高い場合,②運動単位内の筋線維数が多くなった場合,③運動単位内の筋線維の放電の同期性が高まった場合にみられる8).実際には針電極のpick up areaは限られており,正常な運動単位の全域ですら捕捉できていない.これが神経原性に再支配を受けた範囲も広く密度も高い(あるいは筋線維密度分布にばらつきのある),大きな運動単位の検査となると,自ずから電極位置から見えている範囲が運動単位全域の情報ではないことに気がつかなければならない(図5).そのため,高振幅電位を得ようとすると,なかなか適切な電極位置がみつからないことになる.反対に筋線維密度の低下した運動単位を検索する筋疾患の場合は,運動単位の中に入ってさえしまえば密接した各線維の情報に限定されやすいため,容易にspikyな電位が得られやすい.本症例での図2のように,針先を移動させるとあたかも別の電位を見ているかのようにみえる場合でも,発火パターンに注目すれば,同じ電位を別の場所から見ているだけであることがわかる.波形の持続時間はpitch(音の高低)で,波形の振幅は音の大きさで表わされるため,あたりにくくても高頻度で発火する持続期間が長い低音の電位があることを耳で確認し,できるだけMUP全体が把握できるような針先の位置で波形を記録することである.

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る