2264症例から考える針筋電図
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3針筋電図の基本Ⅰ総 論地電極の電位差のさらに差を記録していることになる.実際は接地電極の電位は相殺されるのでA-Bの記録と考えてよい.図1に示すように基準電極である外筒Bは筋線維の活動電位の発生部からの平均距離が遠く,ごくわずかにしか記録されないために(そのため基準電極と呼ぶ)Aの部分で記録が行われていると考えてよい.2) 筋線維の活動電位はどのように記録されるか 筋線維の活動電位の発生部分(筋膜の興奮部)では電位依存性のNaイオンチャンネルが開き,Naイオンの流入を生じる.このときに興奮部の周囲の筋線維から興奮部へ電流が流れ込むことになる(図2).電流が流れ込む上流は流れ込む先よりも電位が高い,すなわちより陽性であるので,電流流入部は相対的により電位が低く陰性となる.この電流が流れている組織の部分を容積伝導体と呼ぶが,針電極はこの容積伝導体の内部で電位差の変化を記録する.図2で容積伝導体の中に置かれた針電極の先端部は近接する筋線維の活動電位の発生部が右から近づいてくると相対的に陽性の電位が記録され,興奮部の直上付近になると陰性となり,興奮部が遠ざかると再び陽性となる.この三相波が容積導体中で記録される単一筋線維の筋電位の基本波形である.「近づいてくる活動電位は陽性,直下で陰性,遠ざかると再び陽性に記録される」と覚えておくとよい. 筋線維では神経と異なり最初の活動電位は筋線維の中心部付近に存在する神経筋接合部で発生し,それが左右に伝搬する(図3).記録電極が図4のような水平方向の異なった位置にあると潜時と波形は変化する.1番の電極では電流の流入口である神経筋接合部の直上にあるためにいきなり上向き(陰性)スパイクを生じる.また3番のように筋線維の端の方に電極が位置すると電極に向かってくるときの陽性成分が目立つ波形となる.電極が筋線維断端から離れた位置にあると陽性成分が主体となる.なお神経伝導検査で表面電極を筋腹の中心におくと,初筋線維の活動電位の発生筋線維の活動電位の発生部分(筋膜の興奮部)では電位依存性のNaイオンチャンネルが開き,Naイオンの流入を生じる.このときに興奮部の周囲の筋線維から興奮部へ電流が流れ込むことになる.容積導体の中に置かれた針電極の先端部は近接する筋線維の活動電位の発生部が右から近づいてくると相対的に陽性の電位が記録され,興奮部の直上付近になると陰性となり,興奮部が遠ざかると再び陽性となる.これが単一筋線維の筋活動電位の基本波形である.(文献2)橋本2013を参考に作成)図2活動電位筋線維基準電極(0 mV)陽性陰性陽性陽性陰性陽性

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