2269骨粗鬆症治療薬クリニカルクエスチョン100
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16 ChapterⅠ 骨粗鬆症のリスク因子とその評価骨粗鬆症とサルコペニアとの関連について教えてください.9骨・骨代謝と骨格筋との相互連関(筋骨連関)について,サイトカイン,マイオカイン,ホルモンなどの液性因子や神経系による制御メカニズムが示唆されています. 骨・骨代謝と骨格筋との相互連関(筋骨連関)については精力的に研究が進められており,これまでの知見などからサルコペニアと骨粗鬆症との関連性,ならびにサイトカイン,マイオカイン,ホルモンなどの液性因子や神経系による制御機構の可能性が示唆されている.宇宙飛行士の場合,宇宙空間において筋量と骨量の減少を同時に認めるため,その予防に向けたレジスタンストレーニングが毎日必要とされる.その際,宇宙飛行士における筋量の回復は骨量の回復と比較して約6倍早く認められるなど骨格筋と骨の間には反応性の違いや相互関連の可能性が示唆される.日本人女性2,400人(40~88歳)を対象とした大腿骨近位部骨密度別サルコペニアの合併率を調べた研究によればサルコペニアの発症が骨粗鬆症と有意に関連していた1).動物実験や基礎研究の分野では,筋萎縮にともないマイオカインの一種であるミオスタチン(growth differentiation factor-8:GDF-8)の発現上昇が認められ,GDF-8ノックアウトマウスでは骨量増加を呈した2).その一方,高齢マウス(24ヵ月齢)をもちいた研究ではGDF-8阻害抗体投与により筋量増加を認めたものの骨量増加作用は認められなかったなど,そのメカニズム解明や中和・阻害医療などへのさらなる応用が期待される.骨細胞で産生されるスクレロスチンについては,骨芽細胞でのβ-カテニンシグナル阻害による骨形成抑制作用を有することが知られているが,肥満高齢者を対象とした検討により,血中スクレロスチン濃度は減量により増加する一方で運動により低下し,その際血中スクレロスチン濃度と筋量との間に負の相関が認められた3). また,これまでの知見などにより,骨格筋と骨代謝の双方に作用すると考えられる液性因子が次第に明らかになってきており,その代表としてビタミンD,性ホルモン,GH/IGF-1などがあげられる.なかでもビタミンDについては,くる病や骨軟化症によって筋組織の異常や筋力低下が引き起こされることや,ビタミンD受容体ノックアウトマウスが骨格筋萎縮を呈したこと,ビタミンD受容体が骨格筋に発現していることなどが明らかとなってきており,ビタミンD補充によって改善を認めることからも骨格筋に対するビタミンDの作用が考えられてきた.臨床的にも血清ビタミンD濃度が不足すると筋力低下や骨格筋萎縮を介して転倒しやすくなることが報告され,海外の5つの臨床試験のメタ解析の結果によっても,ビタミンD投与群の転倒発生率は非投与の対照群に比べて約20%低下する可能性が示唆された4).文献 1) Miyakoshi N, et al.:Prevalence of sarcopenia in Japanese women with osteopenia and osteoporosis. J Bone Miner Metab 2013;31:556-561. 2) Hamrick MW:Increased bone mineral density in the femora of GDF8 knockout mice. Anat Rec A Discov Mol Cell Evol Biol 2003;272:388-391. 3) Armamento-Villareal R, et al.:Weight loss in obese older adults increases serum sclerostin and impairs hip geometry but both are prevented by exercise training. J Bone Miner Res 2012;27:1215-1221. 4) Bischoff-Ferrari HA, et al.:Effect of Vitamin D on falls:a meta-analysis. JAMA 2004;291:1999-2006.(小川純人)

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