2269骨粗鬆症治療薬クリニカルクエスチョン100
5/8

 31骨粗鬆症の診断において鑑別すべき疾患にはどのようなものがあるか教えてください.21原発性骨粗鬆症と類似の病態を呈する続発性骨粗鬆症(Q1表2参照)と,病態の異なる骨粗鬆症類縁疾患(表1)1)を鑑別することが大切です. 原発性骨粗鬆症とは,加齢と自然閉経などの生理的な性腺機能不全をおもな原因とする代謝性骨疾患である.その病態は骨吸収と骨形成の平衡が崩れ,骨吸収優位に傾き,慢性的に持続することにより次第に骨量が減少することであり,臨床的には骨密度の低下により評価される.同様の病態が,加齢と生理的な性腺機能不全以外の原因で生じる場合に続発性骨粗鬆症と総称される. また,骨粗鬆症と同様に低骨密度や易骨折性を示すが,全身的な骨吸収と骨形成の平衡異常以外の原因による疾患を骨粗鬆症類縁疾患とまとめることができる.これらの疾患は,さらに局所的な骨破壊によるものと,ミネラル代謝異常による骨石灰化障害によるものとに大別される. 続発性骨粗鬆症の原因には,薬剤や栄養障害,生活習慣なども含まれる.とくに男性や閉経前年齢の女性における骨粗鬆症では続発性骨粗鬆症の可能性が高いとされる.一方で,高齢者の疾患である原発性骨粗鬆症では,当然のことながら,続発性骨粗鬆症や骨粗鬆症類縁疾患と併存することもあり得る.したがって高齢者では,これらの病態が併存している可能性に注意を払うことが大切である.鑑別診断のために医療面接で聴取すべき情報 既往歴と生活歴および使用薬物に関する情報は不可欠である.しかし,抗けいれん薬や精神科疾患に関する薬剤など,初診時には患者から聴き出しにくい情報も多い.患者との信頼関係の構築が進むにつれて徐々に情報を追加していくことが大切である.骨折リスク因子としての飲酒は1日あたりの純アルコール(エタノール)摂取量が24 gを超えることで判断する. 既往歴として大切なものは,月経歴と骨折歴および消化器疾患や消化管の手術歴などである.45歳未満の閉経は早期閉経であり性腺機能低下症として取り扱う.脆弱性骨折の既往は,続発性に限らず重症度の高い骨粗鬆症を示唆する.消化器疾患では肝硬変や慢性膵炎,あるいは吸収不良症候群が骨折リスクを高める2).胃切除術後にはビタミンDとCaの吸収不全をきたしやすく,続発性骨粗鬆症および骨折のリスクとなる2).臓器移植は続発性骨粗鬆症の原因である. 薬剤情報に関しては,内服のみでなく注射(GnRHアゴニスト,ステロイドなど)や外用薬(エストロゲン貼付薬,吸入もしくは点鼻ステロイドなど)にも注意を払う.ステロイドは非経口投与では骨折発症リスクを上昇させるエビデンスは乏しいとされているが,内因性副腎機能が完全に抑制されるほどの量をもちいている場合もあり注意する.鑑別診断に必要な身体所見 内分泌疾患のうちCushing症候群や甲状腺機能亢進症はそれぞれ特徴的な身体所見に注意続発性骨粗鬆症dⅠd.続発性骨粗鬆症

元のページ 

page 5

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です