2269骨粗鬆症治療薬クリニカルクエスチョン100
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77Q43投与を前提としている経緯がある一方で,多剤併用による治療や薬効に関する臨床試験成績やエビデンスについても集まりつつある.こうした背景をふまえ,骨粗鬆症の薬物治療に際して,原則単剤投与から開始し,その後の経過観察で効果が不十分な場合や頭打ちになった場合,重症例や骨折リスクの高い場合においては,より効力の強い薬剤か作用機序の異なる薬剤の併用を考慮することになる.骨粗鬆症における医師主導型臨床研究である骨粗鬆症至適療法(Adequate Treatment of Osteoporosis:A-TOP)研究会のJOINT-02では,アレンドロネートと活性型ビタミンD3製剤との併用によって治療開始早期から新規椎体骨折抑制効果が認められること,既存椎体骨折を2つ以上有する場合や半定量的評価(semiquantitative:SQ)グレード3の椎体骨折を有する場合において,より併用効果が高いことなどが明らかになっており,実地診療で併用療法をおこなう際の指標になると考えられる3). また,薬物治療をいつまで実施するかという点に関するコンセンサスはないが,基本的に効果と安全性が確認されている間(3~5年間程度)は治療継続が可能と考えられる.長期治療を継続する場合はベネフィットとリスクを勘案する.多くの治療薬の効果については可逆的とされ,投薬中止によってもとの骨代謝状態に戻ると考えられる.薬剤を中止する場合,中止にともなって急速な骨量減少が起こりうるので,注意深く経過観察をおこなうことが重要である.さらにまた,治療経過中は,骨折の有無,疼痛などの自覚症状,運動機能の評価,身長低下などの身体所見,副作用出現の有無などの観察を定期的におこなう必要がある. 薬物治療を継続する場合においても,経過観察中に有意な骨量減少が認められた場合には治療内容の確認をおこなうことが望ましい.また,治療中にかかわらず椎体変形や骨折が生じてしまった場合や,胃腸障害などの副作用によって治療継続が困難な場合などにおいても治療内容の確認や変更をおこなう.骨吸収抑制薬の治療評価に際しては,治療開始3~6ヵ月後の骨吸収マーカーが最小有意変化を超えて変化している,または閉経前女性の基準値内に維持されている場合には治療継続とする.また,骨吸収抑制薬による治療開始6ヵ月~1年後の骨形成マーカーが基準値内に収まらない場合には,治療内容の変更を考慮し,長期投与によって骨代謝マーカーの基準範囲下限以下に過剰抑制されている場合には休薬や中止などの薬物調節を考慮する.PTH製剤テリパラチドの使用については,生涯にわたって2年以内(連日投与製剤),あるいは18ヵ月以内(週1回投与製剤)でのみ投与が認められており,治療期間後には他剤への切り換えをおこなう. 高齢者に対して骨粗鬆症薬物治療を実施・継続する場合には,漫然と投薬を継続することなく,状況に応じて減量や中止も視野に入れた処方内容の変更,定期的な評価や見直し,薬歴の一元管理,非薬物療法の併用や導入も大切である.その際,処方内容や用法についてできるだけ簡便化を目指すとともに,一包化調剤,お薬手帳,服薬カレンダーなどの活用や導入も重要である.近年,BPによる治療継続をおこなう際に定期的再評価の必要性が示されるなど,実地診療における薬剤投与期間や休薬・減薬に関する考え方は,エビデンスや治療指針の確立とともに今後一層整備が進むと期待される.文献 1) 日本骨粗鬆症学会 骨代謝マーカー検討委員会:骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイドライン.Osteoporos Japan 2012;20:31-55. 2) Tsujimoto M, et al.:P1NP as an aid for monitoring patients treated with teriparatide. Bone 2011;48:798-803. 3) Orimo H, et al.:Effects of alendronate plus alfacalcidol in osteoporosis patients with a high risk of fracture:the Japanese Osteoporosis Intervention Trial(JOINT)- 02. Curr Med Res Opin 2011;27:1273-1284.(小川純人)Ⅱa.骨粗鬆症の薬物治療の基本
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