2274補聴器のフィッティングと適用の考え方
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B-4両耳装用の不適切な説明32 わが国では医学,医療の常識に反した説明が行われ,このために誤った考えを持つ補聴器販売員が数多く存在する.1つは「右耳からの情報は主に左大脳半球に伝えられ,左耳からの情報は主に右大脳半球に伝えられる」ので「脳を十分に働かせるために両耳装用がよい」という説明である.他の1つは「補聴器を使わないとその耳の語音明瞭度が悪化する」から両耳装用がよいという説明である.医学,医療の常識に反する誤った説明を補聴器販売員が信じて,補聴器販売を利益優先で行う事態は改善されなければならない.a|優位半球と言語機能の局在 言語中枢は一側の大脳半球に偏在し,この大脳半球を優位半球という.優位半球は,右利きの人では左の大脳半球であり,左利きの人では右大脳半球の人と左大脳半球の人がいるが,いずれか一側である.優位半球の言語中枢に病変があると失語症になる.優位半球と反対側の大脳の言語中枢に対応する部位に病巣があっても失語症にはならない. 聴覚情報による言語理解における,最初の段階である「会話音を言葉(語)として理解する」機能は優位半球のウェルニッケ野で行われている.図1に示すウェルニッケ野に病変がありその他が健常な脳の病態では,聴覚による言語理解ができない感覚性失語症になる.言語機能は複雑で高度な内容ほど高位(高次)の脳で行われ,脳全体が言語機能を担っていると考えられるが,聴覚による言語理解では,ウェルニッケ野を通じた後に高次の機能が発揮される.b|内耳からウェルニッケ野(感覚性言語中枢)への情報伝達 言語理解のための情報については,右耳からの情報は反対側にあるウェルニッケ野に伝達される.そして,左耳からの情報は同側にあるウェルニッケ野に伝達される.ウェルニッケ野は両耳からの情報を受け取り,会話音を言葉として理解する(図2). 突発性難聴で一側耳が高度難聴になる患者は臨床上めずらしくない.また,先天的に一側耳が高度難聴の者は1000名に1名程度存在する.いずれの者においても会話音情報は片耳からのものに制限される.しかし,知的能力に影響はなく,脳の機能の低下は全く起こらない. 「右耳からの情報は主に左大脳半球に伝えられ左耳からの情報は主に右大脳半球に伝えられる」ので「脳を十分に働かせるために両耳装用がよい」という誤った説明を難聴者に行い,利益優先の補聴器販売を行ってはならない.

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