2275国立成育医療研究センター 基本から実践まで!! すぐに役立つ 医療保育実践マニュアル
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58 一般的な保育記録は,保育士が保育中の出来事を振り返り,子どもの行動やそれに対するかかわりについて,その時の子どもの気持ちや行動の意味,保育士の指導・援助の意図までを考え記したものになります. 医療現場における保育記録では,疾患を抱えている患者と家族を支援対象としています.そのため,患者によっては疾患や治療,さらには障がいによって生じる様々な困難と向き合うことを余儀なくされ,遊びや生活援助,成長・発達といった,一般的に保育士が行うと考えられている支援よりも「医療」を優先すべき「課題」がある患者も少なくありません. そうしたなかで,患者一人ひとりの理解を深め,実際の保育をよりよく営むためには,保育過程を明文化することが重要となります.さらに,チーム医療を実践するなかで保育支援を行っていくためには,他職種の理解を得ることが不可欠であり,その内容を共有しやすい記録にすることが求められます.当センターでの保育記録の目的1 上記の内容にあるように,チーム医療を実践するなかで,保育支援を行うためには,他職種と共有しやすい保育記録を記載することが必要です. 当センターでは,患者一人ひとりの疾病の経過と成長・発達に応じた保育の目的や活動内容,保育士のかかわりやその意図を明示し,他職種への情報提供と共有を行います.また,患者がどのように変化・発達しているのかを評価(保育の評価)し,患者・家族への保育環境や保育過程・支援に対する保育士自身の評価,および振り返りを行うこと,この2つを目的としています.保育記録の留意点2 当センターでは,電子カルテを使用して保育記録を行います. 保育記録は客観性があり,簡潔で,患者・家族にかかわるすべての職種が素早く患者の保育過程や支援内容を把握できるような効率性を考慮する必要があります.保育活動後は速やかに記録を行い,開始時間と活動時間を記載し,必ず実施した日に記載します(保育活動を実施する前に記録を行うことはできません).患者の行動や言葉を直接引用し,患者に何が起こったか,どのような保育を誰が,いつ,どこで,実施したのか,また,その反応などの事実を正しく記載します.家族から「誰にも言わないでください」と話された内容を記載する場合は,個人情報に留意しま医療現場における保育記録1B章 保育の実践Ⅰ保育記録マニュアル
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