2276ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017
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アブストラクトテーブル(RCT)を参照).2.3.1  アウトカム全般に関するエビデンスの 質(確実性)はどうか? GC単独療法とGC+CYの比較研究で集まった研究(1件のRCTと1件の非RCT)におけるエビデンスの質(確実性)は,RCT,観察研究ともに「バイアスのリスク」が高く,また「不精確さ」もグレードダウンしたため,各アウトカムにおけるエビデンスの質(確実性)は「very low(非常に低)」であった. GC+POCYとGC+IVCYの検討における3件のRCT(およびこのうちの1件の長期成績)のエビデンスの質(確実性)は,死亡以外のアウトカムで「バイアスのリスク」に問題があり,加えてすべてのアウトカムで「不精確さ」によりグレードダウンしたため,「mod-erate(中)」~「very low(非常に低)」となった.「重大」なアウトカムにおける介入(GC+IVCY)の効果をみると,患者にとって同じ方向ではなかった*1ため,アウトカム全体のエビデンスの質(確実性)は最も低いものを採用し,「very low(非常に低)」とした.*1: 重大と判断された一連のアウトカムに関する介入の効果は,利益または害のいずれか一方ではなく,利益と害を示していた.2.3.2  利益と害のバランスはどうか? 前述したように,今回のSRの対象となった研究ではGC単独治療と比較してGC+CYの優位性を示唆するものがなかった.しかし,対象年以前2)あるいは患者背景の比較がないため今回の検討で採用とはならなかった研究3)では,エビデンスの信頼性は低いもののCYの優位性を示唆する報告があり,欧州リウマチ学会(EULAR)4)あるいはKDIGOの診療ガイドライン(http://kdigo.org/home/glomerulonephritis‒gn/)ではGC+CYを推奨する根拠としてこれらの論文を採用し,欧米ではGC+CYが標準治療となっている.GCとGC+CYの比較についてこれまで検討した二つの論文では不十分と考えられたため,上記引用文献3)について追加検討を行った(本論文は非RCTであり,著者問い合わせするも条件が満たされず,当初は不採用となっていた).エビデンスの質(確実性)は「very low(非常に低)」であり,「重大」なアウトカムである「寛解」について,GC単独よりもGC+CYが優れていた.(引用文献3の内容は推奨作成関連資料① 1—1 CQ1—1エビデンスプロファイル, 1—9 CQ1—1アブストラクトテーブル(非RCT)および1—10 CQ1—1リスク・バイアステーブル(非RCT)に記載).また,AAVの寛解導入治療に関する研究の多くはGC+CYをコントロールとして用いており,GC+CYの有効性・安全性について多くのデータがある.これらを加味してGC+CYのほうがGCよりも望ましい効果が多分に大きいと判断した.なお,GCとGC+CYの比較で検討した論文では害に関するアウトカムのデータが得られなかった.しかし,わが国におけるコホート研究であるRemIT‒JAVでの安全性の解析の解析結果では,寛解導入治療における重篤な感染症合併のリスク因子でGC初期投与量(≧0.8 g/kg)が抽出され,GC単独療法にも副作用の懸念があると考えられた.今回抽出されたSRの対象研究のみでは両者の有効性は同等となるが,追加検討した引用文献3に関する情報およびその他の情報を総合的に判断し,GC+CYはGC単独療法と比較すると,利益が害をおそらく上まわると判断した. 一方,GC+POCYとGC+IVCYの利益の検討ではGC+IVCYはGC+POCYと比較し,「重大」なアウトカム(1,2年死亡)で優れていた(再燃では劣っていたが,再燃は「重大」ではなく「重要」なアウトカム).一方,害をみると重篤合併症発現・重篤感染症発現はGC+IVCYのほうが低かった.したがって,アウトカムの重要性とエビデンスの質(確実性)を考慮すると,GC+IVCYのほうが望ましい効果がおそらく大きいと考えた.さらに,GC+POCYについては,リウマチ性疾患における毒性を検討したMonachらのレビュー5)において,信頼区間は広いものの,すべての研究でPOCY使用に伴う膀胱癌発症のリスクが対照と比べて高かった(OR:3.6~100;膀胱癌発症例の多くは100 g以上の累積服用があり,少なくとも30 gでリスクが上昇する).以上から,害についてもGC+IVCYのほうがおそらく小さいと判断した.したがって,GC+IVCYはGC+POCYと比較し利益がその害をおそらく上まわると判断した.なお,重篤感染症,重篤合併症に関して,総数のみならず,各論文で扱われている個々の有害事象をエビデンスプロファイルに反映することはできなかった.重篤感染症・合併症の発生総数のみならず個々の内容の分析と考察を行うことは今後の課題である.2.3.3 患者の価値観や優先度はどうか? 患者アンケートの結果やパネル会議での意見では,治療選択は確実に寛解が得られるのであれば多少の経済的負担増は仕方ないが,経済的負担は少ないほうがよい.時間的な問題も重要で治療のための通院回数が少なくなることを望んでいる.加えて,専門外の医師を含めて治療薬剤や治療法をすべからく認知していることを望んでいると考えられた. 患者アンケート結果をみると,GC単独とGC+CY2. 3 パネル会議Ⅴ 推奨17

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