2277小児神経専門医テキスト
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1434 先天代謝異常Ⅱの高信号,脳室拡大.血液・尿プテリジン分析,ジヒドロプテリジン還元酵素(DHPR)活性測定によりBH4低下の鑑別診断.PAH解析.治療 PAH異常症ではPhe除去ミルク.BH4反応性がある場合,BH4投与.2)高チロシン血症概念 チロシンは,アミノ基転移酵素(II型の欠損酵素)によって4‒ヒドロキシフェニルピルビン酸,続いて酸化酵素(III型の欠損酵素)によってホモゲンチジン酸,酸化酵素によってマレイルアセト酢酸,イソメラーゼ(I型の欠損酵素)によってフマル酸とアセト酢酸に分解される.この代謝によって起こる,常染色体劣性遺伝性疾患.原因 それぞれに対応した酵素活性低下により起こる.I型(フマリルアセト酢酸ヒドラーゼ),II型(チロシンアミノ基転移酵素),III型(4‒ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素).症状 I型ではフマリルアセト酢酸の蓄積による肝実質細胞と近位尿細管細胞障害.II型では,チロシンの針状結晶が析出することによって,過剰角化,びらん,角膜潰瘍.III型は,けいれん,精神発達遅滞,失調症状.診断 血中アミノ酸分析と尿中有機酸分析による中間代謝物の検出.治療 低フェニルアラニン・低チロシン食,特殊ミルク.3)メイプルシロップ尿症概念 分枝鎖アミノ酸のロイシン,イソロイシン,バリンの代謝物のα‒ケト酸(アミノ基が転移されできる.ケトン基+カルボキシル基よりなる有機酸)の脱水素反応異常による常染色体劣性遺伝性疾患.原因 分枝鎖α‒ケト酸脱水素酵素(BCKDH)の欠損によって,分枝鎖アミノ酸および分枝鎖ケト酸の血中濃度が上昇しミエリン合成の障害をきたす.症状 哺乳力低下,嘔吐,けいれん,筋緊張低下,後弓反張など治療 特殊ミルク(分枝鎖アミノ酸除去ミルク),脂肪投与,高カロリー輸液,アシドーシスの補正.4)非ケトン性高グリシン血症概念 血中や髄液などの体液中にグリシン開裂酵素系(GCS)異常により,大量のグリシンが蓄積する常染色体劣性遺伝性疾患.原因 ミトコンドリア内GCSのサブユニット;glycine decarboxylase,aminomethyltransferase,hydro-gen carrier protein,dihydrolipoamide dehydrogenase(ピルビン酸脱水素酵素複合体やα‒ケト酸脱水素酵素複合体と共通)の異常による.症状 • 新生児型:筋緊張低下,無呼吸,吃逆,昏睡けい図1 ビオプテリン代謝系とモノアミン合成系フェニルアラニン,チロシン,トリプトファンはそれぞれフェニルアラニン水酸化酵素,チロシン水酸化酵素,トリプトファン水酸化酵素によりチロシン,L‒ドパ,5‒ヒドロトリプトファンに変換されるが,その際テトラビオプテリンを補酵素として必要とする.テトラビオプテリンの生成系の異常により,芳香族アミノ酸の水酸化は障害される.ネオプテリンとビオプテリン測定により代謝障害のレベルを知ることができる.なお,ビオプテリン合成系の最初の酵素であるGTPシクロヒドラーゼは瀬川病の原因遺伝子(常染色体優性遺伝)である.GTPジヒドロネオプテリン三リン酸6-ピルボイルテトラビオプテリン;PTPテトラビオプテリン;BH4キノノイド型ビオプテリン;qBH2ビオプテリン;qBH2フェニルアラニンチロシントリプトファンチロシンL-ドパ5-ヒドロトリプトファンセピアプテリンGTPシクロヒドラーゼ Iセピアプテリン還元酵素PTP合成酵素芳香族アミノ酸水酸化酵素ネオプテリンビオプテリン

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