2282慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016
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2.1.臨床的特徴 EBV‒HLHは,EBVの初感染または再活性化(感染細胞の再増殖)に伴い,しばしば急激な経過で病勢が進展する重篤な疾患である.血球貪食性リンパ組織球症(HLH)は血球貪食症候群と同義で,高サイトカイン血症を背景に,持続する発熱,血球減少,肝脾腫,播種性血管内凝固(DIC),高フェリチン血症,および骨髄などに血球貪食組織球増多をきたす症候群である1).ステロイド等の免疫調整療法により治療が行われるが,難治再燃例には,多剤併用化学療法や造血幹細胞移植が必要なことがある. HLHは,HLH‒2004に基づき診断され,遺伝性HLHと,感染症や悪性腫瘍等の後天性疾患に続発する二次性のHLHに大別される2).EBV‒HLHは,EBVの活動性感染がありHLHの診断基準を満たすものと定義される.EBV‒HLHの診断には,EBV関連抗体による感染既往の評価や,リアルタイムPCR法等による末梢血中のEBV DNAの定量が診断や病勢の評価に重要である.さらには,EBV感染細胞の同定やクローナリティの検索も,鑑別の有用な指標と考えられている.HLHの国際診断基準3)を元に作成した本ガイドラインでのEBV‒HLHの診断基準を表2に示す. 初感染EBV‒HLHは,主にEBV感染CD8陽性T細胞がモノクローナルに増殖し,炎症性サイトカインを過剰に産生することで,マクロファージの活性化や血球貪食が誘導されることにより発症2EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV—HLH) 11第2章 疾患の基本的特徴表2 ‌‌EBウイルス関連血球貪食性リンパ組織球症(EBV—HLH)診断基準(厚生労働省研究班,2015年)以下の1と2のいずれも満たす1.EBウイルスDNAが末梢血中に増加している2.以下の8項目のうち,初発時5つ以上,再燃・再発時3つ以上を満たす 1)発熱≧38.5℃ 2)脾腫 3)血球減少(末梢血の少なくとも2系統に以下の異常あり):  ヘモグロビン<9.0g/dL,血小板<100,000/μL,好中球<1,000/μL 4)高トリグリセリド血症(空腹時≧265mg/dL)または低フィブリノーゲン血症(≦150mg/dL) 5)NK細胞活性低値または欠損 6)血清フェリチン≧500ng/mL 7)可溶性IL—2受容体≧2,400U/mL 8)骨髄,脾臓,またはリンパ節に血球貪食像あり,悪性所見なし付記1)診断に有用な所見: (a)髄液の細胞増多(単核球)および/または髄液蛋白増加 (b)肝で慢性持続性肝炎に類似した組織像2)診断を示唆する他の所見: 髄膜刺激症状,リンパ節腫大,黄疸,浮腫,皮疹,肝酵素上昇,低蛋白・低Na血症,VLDL値上昇,HDL値低下3)発症時に上記の基準をすべて満たすわけではなく,経過と共にいくつかを満たすことが少なくない.基準を満たさない場合は注意深く観察し,基準を満たした(同時期に症状・所見が揃った)時点で診断する.

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