2282慢性活動性EBウイルス感染症とその類縁疾患の診療ガイドライン2016
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上はコピー/μgDNAで表記された値とほぼ同じ値となる. リアルタイムPCR法では,(1)サイバーグリーン法,(2)タックマンプローブ法,(3)ハイブリプローブ法,(4)スコーピオンプローブ法,(5)オリゴヌクレオチドプローブ法など多くの検出法がEBV DNA定量には使用可能である.偽陽性を避けるためプローブによる検出方法が推奨される3,4). CAEBVは単核球中のEBV DNA量が103コピー/μgDNA以上の高値を示すことが多く,診断基準においても「末梢血または病変組織におけるEBVゲノム量の増加」があげられている2).そのため,CAEBVの診断にはEBV DNA定量が必須であり,定性PCRによるEBV DNAの検出は,CAEBVの診断には適していない.またCAEBVでは,感染細胞はT細胞またはNK細胞であり,それら感染細胞分画のEBV DNA量が全体(全血)のEBV DNA量よりしばしば一桁以上高値を示す. 一方,2011年にWHOの委員会が主導し,測定値を統一するためのEBV標準サンプルを設定し(購入可能),国際単位(IU)で表すことを目指している.このEBV標準サンプルを使うことで施設間誤差および解析方法誤差が修正され統一された解析結果を共有できることが見込める.同じ検体であれば“どこで・いつ解析しても”ほぼ同じEBV量が得られることになる.国際単位でのデータの集積を進めることで現在用いられている標準的な単位であるコピー/μgDNAからIU/μgDNAへ換わる可能性が高い. EBER‒ISHおよび免疫組織染色による病理組織診断はEBV感染細胞の有無とリンパ腫・炎症性疾患との質的な鑑別が可能であり,感染細胞の同定もできる場合がある.また,リンパ節腫脹や皮膚浸潤があり,悪性リンパ腫との鑑別が難しい症例では極めて有用である.ただしEBV DNA量の定量という点に関してはリアルタイムPCR法による定量解析が優る5). 感染細胞の表現型の解析はCAEBVの診断に必要であるが,予後,無治療経過観察の可否との関連は明らかでない.クローナリティの有無と予後,無治療経過観察の可否との関連も明らかでない.CAEBVは進行する致死的疾患であるため,診断後は治療介入の必要がある例が多いが,感染細胞の表現型やクローナリティにより治療方針が変更されうるという根拠はない.しかし,予後や治療の層別化など,将来の詳細な解析に役立つ可能性があり,その目的でのクローナリティ解析は意義CAEBV診断後の治療介入の判断に,感染細胞の表現型・クローナリティは有用か?推奨とグレード感染細胞の表現型やクローナリティは,CAEBV診断後の治療介入の判断に有用か否かは明らかではない(2D).CQ2要 約27第3章 クリニカルクエスチョン(CQ)に対する推奨と解説 文献検索式p.51参照文献 1) Kimura H, et al.:J Clin Microbiol 1999;37:132‒6 4) Dreier J, et al.:J Clin Microbiol 2005;43:4551‒7 2) Kimura H, et al.:Blood 2012;119:673‒86 5) 森下保幸,他:細胞工学別冊脱アイソトープ実践プロトコール2キット簡単編.1998;214‒23 3) Jebbink J, et al.:J Mol Diag 2003;5:15‒20

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