2283女性内分泌クリニカルクエスチョン90
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Q22 挙児希望のあるPCOSはどのように治療する? 534PCOS例にも有効であるとする報告もあるが,わが国の治療指針では,肥満,耐糖能異常またはインスリン抵抗性をもつ症例に対して併用をすすめている. 妊娠中の継続使用により,流産率の減少や妊娠糖尿病発症の予防が期待されており,2013年のメタアナリシスでは流産,妊娠糖尿病,早産,妊娠高血圧腎症の減少が報告されている6).メトホルミンは米国食品医薬品局(FDA)のカテゴリーではBに分類されており,2014年のメタアナリシスでも妊娠初期の投与による胎児異常の増加は指摘されていない7).しかしながらわが国の添付文書では妊娠中の投与は禁忌とされており,妊娠中の投与については慎重に検討する必要がある.わが国のメトグルコⓇ錠の1日最大投与量は2010年から引き上げられており,欧米の臨床研究で用いられることの多い1,000~1,500 mgの投与も可能となっているが,わが国では1日量750 mgを超える使用経験が少なく注意が必要である(処方例②).ゴナドトロピン製剤 ゴナドトロピン製剤を用いた治療も,クロミフェン治療が奏功しない場合のセカンドラインとして位置づけられる.PCOSでは多胎妊娠と卵巣過剰刺激症候群のリスクが高いため,卵胞発育のモニタリングは必須である.過排卵を最小限にするため,通常はリコンビナントFSH製剤もしくはピュアFSH製剤を用いた低用量漸増法が採用される(処方例③).具体的には,初期投与量を50~75単位とし14日間の投与後,卵胞発育に応じ7日ごとに25~37.5単位(初期投与量の半量)ずつ増量する.自己注射製剤の場合は,より細かいdose設定(ultra-low dose法)が可能であり,7日ごと8.3単位ずつ増量する方法により80%を超える単一卵胞発育が可能であったと報告されている8).主席卵胞径が18 mm以上でヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)製剤を投与するのが一般的だが,卵胞発育が4個以上の場合はhCG投与を中止する(ゴナドトロピン療法についてはQ30,31も参照のこと).卵巣多孔術(LOD) ゴナドトロピン療法同様,クロミフェン治療が奏功しない場合のセカンドラインとして位置づけられる.ゴナドトロピン療法と卵巣多孔術(laparoscopic ovarian drilling:LOD)の比較では,排卵率,累積妊娠率は同等だが,LODでより多胎妊娠が少ないことが報告されている9)(LODについてはQ23で詳説する).生殖補助医療(ART) 上記治療が奏功しない場合は,生殖補助医療(assisted reproductive technology:ART)の適応となる.ART導入のタイミングは,他の不妊因子の合併や患者年齢によっても個別化される.卵巣刺激法は上に述べた方法に準じて行い卵巣過剰刺激症候群の予防に努めるが,単一【処方例】●下記のいずれかを用いる① クロミッドⓇ錠(50 mg)1回1錠 1日1~2回 5日間 月経もしくは消退出血2~5日目から投与開始(添付文書上は5日目から)②メトグルコⓇ錠(250 mg)1回1錠 1日2~3回(保険適用外)連日③ ゴナピュールⓇ注(75単位)1回1アンプル(75単位) 1日1回 14日間連日筋注,14日目以降,卵胞発育に応じ7日ごと1/2アンプル(37.5単位)ずつ増量
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