2283女性内分泌クリニカルクエスチョン90
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196 Chapter 17 乳癌タモキシフェンの子宮内膜に対する副作用とその対策は?79タモキシフェンには子宮内膜に対する副作用があるため,乳腺外科医と産婦人科医で連携した対応が必要である.タモキシフェンと選択的エストロゲン受容体修飾薬について タモキシフェン(tamoxifen:TAM)は選択的エストロゲン受容体修飾薬(selective estrogen receptor modulator:SERM)に分類され,エストロゲン受容体(estrogen receptor:ER)に対してアゴニスト/アンタゴニスト作用を示す.わが国の添付文書上は,乳癌に対する効能・効果を有する.タモキシフェンの子宮内膜に対する影響 TAMは女性内分泌学的観点から,そのエストロゲンのアゴニスト作用が問題となる.特に子宮内膜はTAMの影響を受けやすい組織であるため,子宮内膜に対する副作用として現われる.TAMの子宮内膜に対する機序についての詳細はいまだ完全には解明されていないが,その有害事象として不正性器出血,子宮内膜ポリープ,子宮筋腫・子宮内膜症,子宮内膜癌,子宮内膜増殖症および子宮肉腫などがあげられる.1.子宮内膜ポリープ TAM内服後の内膜ポリープ発症については,比較的早期から指摘されてきた.2005年にNational Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)のBreast Cancer Prevention Trialでは,プラセボ群と比較したランダム化比較試験において,TAM内服による子宮内膜ポリープ発症の相対危険率(RR)は,閉経前で1.9(95% CI 1.55-2.41),閉経後でRR 2.4(95% CI 1.76-3.24)と,閉経の有無にかかわらず有意に上昇すると報告されている1).2.子宮筋腫・子宮内膜症 NSABPは,TAM内服例では子宮筋腫,子宮内膜症および卵巣囊腫のリスクが上昇すると報告している.TAM内服例の各病態の発症リスクはプラセボ群と比較して,閉経前女性では子宮筋腫RR 1.3(95% CI 1.14-1.55), 子宮内膜症RR 1.9(95% CI 1.35-2.70), 卵巣囊腫RR 1.5(95% CI 1.20-1.78)であり,閉経後では子宮筋腫RR 1.4(95% CI 1.04-1.80), 子宮内膜症RR 1.9(95% CI 1.29-5.58)である1).3.子宮内膜癌,子宮内膜増殖症および子宮肉腫 TAMは子宮内膜に対して増殖に作用することから,子宮体癌,子宮内膜増殖症を発症することが知られている.50歳以上のTAM内服女性ではプラセボと比べて,タモキシフェンの服用期間中に子宮内膜癌を発症するリスクが増加した(RR 4.01,95%CI 1.70-10.90)2)3).一方49歳以下のTAM投与例においては子宮内膜癌のリスク増加は認められなかった(RR 1.21,95%CI 0.41-3.60)2)3).またNSABPの報告では子宮内膜増殖症発症もRR 2.06(95% CI 1.64-2.60)と有意な上昇を認めた1). さらにTAM投与と子宮肉腫発生の関連についても指摘されており,NSABP は,TAM投

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