2284知的障害・発達障害のある子どもへのコミュニケーション支援
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第1部 話すときの注意ポイント101)短期記憶であるワーキングメモリ よちよち歩きの子どもがいたとする.その子に向かって「○○ちゃんおいで」と大人が呼びかけた.子どもが大人のほうに来ようとして歩いていたら,目の前にボールが転がってきた.子どもはそのボールに気を奪われて,呼ばれたことを忘れてしまう.忘れてしまった子は,短期記憶力の一つであるワーキングメモリが未形成といえる. 一方でボールに気を奪われながらも,大人から呼ばれたことを思い出して,近寄る子はワーキングメモリが一つ以上あることになる. 私たちは,例えば車の運転をしながら目の前のことだけではなく,明日の予定などを考えることができる.頭の中でアレコレ考えるときにもワーキングメモリが使われる. 認知症の人が,食事をしたのにもかかわらず「食べていない」と言い張る.こういう場合も,短期記憶であるワーキングメモリの働きに問題があると考えられる.2)長期記憶がワーキングメモリの働きを助ける 落ちつきのない子どもの中には,ワーキングメモリの働きが良くない子がいる.通常は,「Aをしたら叱られる,Bをしたらほめられる,だからBをしよう」とは考える.ところがワーキングメモリがうまく働かないので,AとBを比較検討できない.そしてAをやって叱られることを繰り返す.こういう子の場合,冷静なときにAとBの行動と結果を教える必要がある.教えれば長期記憶となり,行動の歯止めになると思われる. 脳に関係するさまざまな疾患,うつ病,統合失調症などもワーキングメモリの働きが関係しているとされる.知的障害・発達障害のある子どもと関わる際にも,ワーキングメモリへの配慮は不可欠である.ワーキングメモリとは何か1ワーキングメモリへの配慮おいでおいで

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