2285リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版
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I 安全管理総論2解説1. リハビリテーション医療における医療事故,インシデントの状況 本ガイドライン初版でリハビリテーション医学会研修施設の調査,日本言語聴覚士協会の調査が報告されている.その後の同様の調査としては全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会(現,回復期リハビリテーション病棟協会)による調査,いくつかの病院での報告がある.また日本医療機能評価機構が行っている医療事故情報収集等事業で収集されたインシデント,事故報告のうちリハビリテーションに関連するものが2007年10月から2008年9月までの1年間について報告されている. 2004年に日本リハビリテーション医学会研修施設を調査対象として安全管理に関する全国実態調査を行い,本ガイドライン初版で資料として提示されている.病院あたり年間平均5.4件の事故報告があり,インシデントが平均70.9件報告され,死亡事故が全体で4件起きていたと報告している.訓練室では転倒・転落が,病棟では転倒・転落および誤薬が上位を占めており,痙攣発作,誤嚥,血圧低下,低血糖発作,チューブや装着している医療機器のトラブル,関節可動域訓練後の痛み,物理療法後の熱傷,オーダーの確認不足,下肢手術後の誤った荷重,患者への説明不足等があげられている1). 日本言語聴覚士協会が2004年,2005年に2回行った「言語聴覚士のリスクに関するアンケート調査」を報告しており,597件のヒヤリ・ハットのうち身体に関するものが362件(61%),期待・公平・意思疎通に関するものが112件(19%),プライバシーに関連するものが15件(3%),その他・記載なしが108件(18%)としており,具体的な項目では転倒・転落が128件,誤嚥・窒息・肺炎が116件,説明・意思疎通不足が41件,異変・急変が36件の順で多かったと報告している2). 日本医療機能評価機構は厚生労働省の委託事業として2004年より全医療機関の医療事故等の有害事象を恒常的に収集し分析する医療事故情報収集等事業を行っている.その中でリハビリテーションに関連した医療事故,ヒヤリ・ハット事例について報告している.医療事故としては2004年10月から2006年12月の間に物理療法で熱傷が4件,運動療法他で骨折・筋断裂等14件,その他の事故が作業療法で1件,計19件の医療事故が報告されている.また,2007年10月から2008年第1章 安全管理総論CQ 1リハビリテーション医療において安全管理はなぜ必要か?回 答 ▶リハビリテーション医療において有害事象,有害事象につながる可能性のあるヒヤリ・ハットは起きており,安全管理は必要である. ▶リハビリテーション治療中の有害事象は患者にも病院にもよい結果をもたらさないため,安全管理を適切に行うことが求められる. ▶重大な有害事象を発生する前に対応することが必要であり,有害事象時の対処手順,報告手順を定めておくこと,その後の再発予防対策を適切に行うことが求められる.

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