2285リハビリテーション医療における安全管理・推進のためのガイドライン 第2版
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1 血圧上昇・低下252運動負荷を伴う訓練を実施するための基準エビデンス 血圧はバイタルサインの1つであり,全身状態を把握するために重要な指標である.院内で生じた心肺停止の予測因子に関する調査では,意識レベルの低下,意識消失,低血圧(収縮期血圧<90 mmHg),徐呼吸,頻呼吸,SaO2低下,徐脈が有意な因子として抽出された1).また,ICUに入室する必要を生じた患者において,入室の8時間前に生じたバイタルサインの異常では,血圧低下(収縮期血圧<90 mmHg)が最も多くみられていた2).さらに,迅速対応システム(Rapid Response Sys-tem:RRS)の呼び出し基準を検証する症例対照研究において,血圧低下はICU入室の危険因子とされた.そのオッズ比は収縮期血圧90 mmHg以下6.4(95%信頼区間:4.5‒9.2),収縮期血圧85 mmHg以下11.0(95%信頼区間:6.7‒18.1),収縮期血圧80 mmHg以下20.6(95%信頼区間:12.3‒34.4)となっていた3).解説 リハビリテーション医療の対象となる患者は様々な併存疾患があることが多く,低血圧や高血圧も頻繁にみられる.基礎疾患がなく生じる本態性低血圧や本態性高血圧と,何らかの基礎疾患により二次的に血圧が低下・上昇するものがある.血圧異常では重要臓器の血流障害による問題を生じる可能性がある.脳はその筆頭となる.脳血管には自動調節機構があり,血圧が変動しても脳への血流量を維持する機構で,生理的状態では,収縮期血圧が70~150 mmHgの範囲内であれば脳血流量は一定に保たれるとされている4). リハビリテーション医療の対象となる疾患には自律神経障害を呈するものも多く含まれる.これらの患者では起立性低血圧を生じることも少なくない.起立性低血圧は血圧値が低いのみでなく,ふらつき等の異常を呈することも多く,リハビリテーションの阻害因子として重要である.しかし起立性低血圧を呈する患者に対して積極的なリハビリテーション治療を実施しないことは,廃用症第2章 運動負荷を伴う訓練を実施するための基準1 血圧上昇・低下CQ 1血圧上昇・血圧低下がある場合に運動負荷を伴う訓練を行うか?推 奨 ▶血圧変動の原因が明確であり,全身状態が安定していると判断できる場合は,訓練を実施することを提案する.ただし,訓練を実施する際には,症状やバイタルサインの変化に注意し,訓練内容は患者の状態に応じて調整する必要がある.●グレード▶2C 推奨の強さ▶弱い推奨 エビデンスの確実性▶弱 ▶訓練中止を考慮する目安として,収縮期血圧180~200 mmHgを超える場合,または収縮期血圧70~90 mmHg未満を参考値とすることを提案する.●グレード▶2D 推奨の強さ▶弱い推奨 エビデンスの確実性▶とても弱い

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