2287骨関節画像診断入門 第4版
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1980年代に,著者はあるレジデントと一緒に膝関節に関する文献を勉強していた。その際,彼に,内側側副靱帯の部分損傷の診断基準を作成し,さらに半月板関節包分離を除外するために,T2強調の矢状断像とともに冠状断像も撮像するように命じた。しばらくしたある日,そのレジデントが著者に尋ねた。「なぜT2強調冠状断像をルーチンに撮像しないのですか? T1強調冠状断像ではたいてい何の情報も得られなくて,結局はいつもT2強調冠状断像でやりなおしてますよね!」著者は「確かにそうだ。プロトコールの作成は十分考えて行わなければならないね」と彼に謝った。このレジデントが2週間後に他の部門に移ってから,著者たちは膝関節の標準プロトコールにT2強調冠状断像を組み入れることにしたのである(生意気なレジデントめ!)横断像は当初,位置決めのために撮影されていた。やがて,膝蓋大腿軟骨や内側膝蓋ひだの評価にも役立つことがわかった。冠状断像と同様,病変の描出にはT2またはT2*強調像が必要である。T1強調像またはプロトン密度像に脂肪抑制を併用すると半月板病変がわかりやすい。脂肪抑制によって骨髄の高信号が抑制され半月板がよく描出されるからである。エコー時間の短いFSE撮像(FSE法プロトン密度像)は,半月板の描出に有効とする論文もあるが,検出感度が低いと報告している論文もある。どちらが正しいかは,著者もわからない。FSE法プロトン密度像では半月板病変に対し80%の検出感度であったとする報告があるのに対し,従来のスピンエコー法のプロトン密度像では検出感度は95%に近いという報告がある4。わずか3分間の節約のために半月板損傷の検出感度を95%から80%に下げる必要はないと思うので,著者は従来のスピンエコー法のプロトン密度像を使用することを推奨する。現在,著者が推奨するプロトコールは,スピンエコー法による脂肪抑制併用プロトン密度矢状断像と,脂肪抑制併用のFSE法T2強調矢状断像・冠状断像・横断像である(表9-1)。このプロトコールには多くの変法が存在する。たとえば,多くの施設では,種々の理由からFSE法T2強調像の代わりにグラディエントエコー法を使用している。MENISCI半月板正常の半月板はC字型をした線維軟骨で,T1・T2強調像のいずれにおいても均一な低信号を示す(図9-1)。T2*強調像では,通常,半月板内部にやや高い信号が見られる。これに対し,T1強調像では半月板内部に少しでも高信号が認められれば異常である。ただし,小児の場合は正常でも半月板内部に高信号が見られることがあり,これは正常の血流によるものである。関節面に達しない半月板内の高信号は,線維軟骨の粘液様変性であり,軟骨基質内の変性を表している(図9-2)。これは,加齢による半月板の正常な磨滅を示しているものと思われる。軟骨基質内変性は通常は症状をきたすことはなく,臨床所見や関節鏡では診断すること9.膝関節のMR174表9-1膝関節の撮像プロトコールTR/TENEXマトリックス脂肪抑制スライス厚FOV(mm)(cm)プロトン密度矢状断像2000/201192○414T2強調矢状断像4000/702192○414T2強調冠状断像4000/702192○414T2強調横断像4000/702192○414NEX=number of excitations(加算回数),FOV=field of view

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