2287骨関節画像診断入門 第4版
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CHAPTER2良性の泡状溶骨性病変は放射線科医が日常診療で最もよく遭遇するものであり,鑑別に挙げるべき疾患は多い。放射線科医は,経験をもとにX線上の鑑別診断を体系立てていることが多い。このいわゆる“パターン認識”という方法には確かに利点はあるが論理的でなく,ときに診断を誤ることもある。たとえば,あたかも良性のように見える稀な原発性悪性腫瘍については,当然ながら診断を誤ることになる。このような例を一度経験すると,たとえそれが100万例に1例しか出会わないような稀な悪性腫瘍であっても,これを鑑別診断リストに含めなければならないと考えてしまいがちである。もし稀な疾患まで網羅するならば,鑑別に挙げるべき疾患は膨大な数となり,放射線科医は依頼医に対して有用な情報を提供できなくなってしまう。依頼医にすべての鑑別疾患を網羅したリストを示すのならば,何巻もある骨X線診断学の教科書の索引を手渡すのと何ら変わりはない。読者も半分も当たらないような鑑別診断リストは必要ないだろう。それならコインを投げて決めるのと大差ない。そこで,著者は95%ぐらいの確率で正解するような鑑別法を披露する。この95%という数字は,ほとんどの領域で満足のゆくものと著者は思う。ただし,もし著者が骨折とか脱臼とかいったもので20回に1回も診断を間違えているならば,間抜けと言われても仕方がないが……。それはさておき,著者はこの本で95%ぐらい正解できるような鑑別診断法を述べようと思うし,そのとおりにすればほとんどの読者が同程度の正診率を得ることができる。より正確な鑑別診断が必要ならば,この鑑別疾患リストに読者自身で若干の疾患を付け加えればよい。鑑別診断リストは短ければ短いほど覚えやすく,利用するのに便利である。長くなればそれだけ正確にはなるが,その代わり,覚えにくくて使いにくいものになる。記憶術は長い鑑別診断リストを思い出すのに役立つので,著者の使っているものを伝授する。記憶術(mnemonic)を好まない人も多いようだが(その妥当な理由に,ついぞお目にかかったことはない),どんな方法であれ,鑑別診断を思い出すのに役立つようなものは利用するべきであろう。特に,良性の溶骨性病変の疾患リストは大変多いので,記憶術が有用なはずである。著者は放射線科の研修に入る前には空軍で外科医をしていたが,その頃は週に半日以上,ある放射線科医にくっついて豆知識の収集に勤しんでいた。その放射線科医はIvanBarretという人で,彼には大変お世話になった。著者に“FEGNOMASHIC”という記憶法を教えてくれたのは彼である。これは良性溶骨性病変の頭文字をつなぎ合わせたもので,たとえば,FはFibrousdysplasia(線維性骨異形成症),EはEnchondroma(内軟骨腫)を表している(後述)。著者は,個々の疾患がどのようなものか,X線写真でどのように見えるかはわからなかったが,各々の頭文字だけはせっせと記憶した。そして,このほかの記憶術を彼から教わる前に(…もの覚えが悪かったのだ),放射線科の研修を始めるために著者は空軍を退役した。それは放射線科の研修を始めた最初の週であったが,20人ほどのレジデントが出席するカンファレンスで,1年目のレジデントの中から著者が犠牲者に選ばれ,問題症例をあてられてしまった。たまたま良性溶骨性病変であったので,たちどころに12から15個ほどの鑑別診断を著者は列挙した。とたんにカンファレンスルームは静まり返った。著者はかの空軍時代の放射線科医に心から感謝したが,表面は平静を装っていた。カンファレンスが休憩に入ったとき,1年目のレジデントの一8良性溶骨性病変Benign Lytic Lesions

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