英国での9~93歳の525連続症例のてんかん発作予後調査では,63%が発作抑制されたが,抗てんかん薬が漸減中止でき治療終結に至ったのは6.5%にすぎず1),抗てんかん薬治療は長期になる症例が多い.PMDA医薬品情報サイト掲載の治験データに基づく各抗てんかん薬の副作用頻度は,昔と最近では報告基準が異なるため必ずしも同列には比較できないが,バルプロ酸ナトリウム(VPA)の14.5%からスチリペントール(STP)の91.7%まで様々で,最近発売の新規抗てんかん薬は70%前後と高頻度である2).そのため,抗てんかん薬治療開始時には各薬剤の作用機序を考慮した合理的で慎重な選択,長期の服用,成人期での副作用にも配慮した選択が必要となる. 特異体質者の頻度が少ない,長期投与でないと出現しないなどの理由で,少数例の治験では気づかれず販売後に顕在化する副作用もあるので,発売初期には注意して慎重な増量をしたほうがよい.抗てんかん薬に共通する重大副作用としては,重症薬疹,造血機能障害があり,その他には,眠気,ふらつき,めまいなどの精神神経系副作用が多い3,4). 抗てんかん薬の副作用を大きく分けると,特異体質によるものと,薬理作用に関連して起こるもの,発作頻度変化に伴う生物学的変化によるものがある5)(表1).特異体質によるものとしては重症薬疹が重要で,重症薬疹になりやすい薬疹病型にはStevens-Johnson症候群型薬疹(SJS),中毒性表皮壊死症型薬疹(toxic epidermal necrolysis:TEN),ヒト6型ヘルペスウイルス(HHV-6)の再活性化が関与する薬剤性過敏症症候群(drug induced hypersensitivity syndrome:DIHS)などが知られている6).はじめに1K抗てんかん薬の薬物療法の基本2. 副作用分 類発現部位例1.特異体質性副作用重症薬疹(LTG, CBZ,他)2.薬理関連性副作用1) 投与薬剤起因性中枢神経系眠気(PB, CBZ,他),発作増悪(CBZによるミオクロニー発作増加,他),認知機能障害(TPM, PER,他)非中枢神経系尿路結石(ZNS, TPM,他),発汗障害(ZNS, TPM,他)胎児障害神経管閉鎖障害(VPA,他)2) 薬物相互作用起因性中枢神経系酵素誘導-血中濃度低下による発作増悪(CBZ, PHTなどの追加)タンパク結合率の高い薬剤追加-遊離抗てんかん薬増加による眠気(STP,CZP,PERなどの追加)非中枢神経系悪心・嘔吐(VPAにLTG追加,他)3) 発作頻度変化の影響中枢神経系強制正常化CBZ:カルバマゼピン,PHT:フェニトイン,ZNS:ゾニサミド,TPM:トピラマート,PER:ペランパネル,LTG:ラモトリギン,VPA:バルプロ酸ナトリウム,PB:フェノバルビタール,CZP:クロナゼパム,STP:スチリペントール.表1 抗てんかん薬の副作用の分類と代表例K抗てんかん薬の薬物療法の基本107K. 抗てんかん薬の薬物療法の基本 2. 副作用
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