作用機序 スチリペントール(stiripentol:STP)は複数の抗てんかん機序が報告されている1)(図).①シナプス間隙でのGABAの取り込みを抑制.②GABAトランスアミナーゼを抑制することにより,シナプスにおけるGABA濃度増加作用をもたらし,抑制系機能を高める.③GABAA受容体の開口時間を延長し,受容体伝達を亢進させ,抑制系機能を高める.α3 サブユニットを含むGABAA受容体では作用が強いが,β1を含むGABAA受容体では作用が弱い2).STPとベンゾジアゼピンはGABAA受容体の作用点が異なり,相加作用が期待できる3).④CYP3A4,CYP2C19やCYP2D6の抑制作用で他の抗てんかん薬の代謝を抑制し濃度を上昇させることで抗てんかん作用を示す.クロバザム(CLB)はCYP3A4による脱メチル化とCYP2C19による水酸化で代謝されるが,STPによりCLBやdesmethyl CLBの濃度が上昇し抗てんかん作用が増強される4). 吸収・排泄 STPは空腹時に投与した時に比べ,食後に投与した時に血中濃度が高い傾向を示し,単回投与でのCmaxは3.43μg / mLおよび6.63μg / mLで,約2倍の違いがあり,食後投与が有効である.Tmaxは約2時間で,内服後2時間で濃度が最も高くなる.血漿蛋白結合率は99%と高く,多くがアルブミンと結合して存在し,ごく一部が血液脳関門を通過して中枢神経系に至る5). STPは抱合および酸化反応により広範に代謝され,主に尿中に排泄されるが,酸化反応にはCYP1A2,CYP2C19,CYP3A4などの関与がわかっている.抗てんかん薬各論18. スチリペントール(STP)L1. 脳における主要な抑制性神経伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)のシグナル伝達を増強することにより,抗てんかん作用を示す ① 神経終末より放出されたGABAの取り込み阻害作用 ② GABA分解酵素(GABAトランスアミナーゼ)の活性抑制作用 ③ GABAA受容体のシグナル伝達における促進性アロステリック調節作用2. CYP阻害作用に基づく薬物代謝阻害作用により,併用抗てんかん薬の血中濃度を高め,その抗けいれん作用を増強する図 スチリペントールの作用機序(インタビューフォーム2013年12月改訂第4版より筆者改変)GABAGABAGABAGABA-TGABA-TSSASSACl-GABAA受容体神経細胞神経終末スチリペントールスチリペントールアストロサイト①②②③GABA-T:GABAトランスアミナーゼSSA:コハク酸セミアルデヒドCl-:塩化物イオンL抗てんかん薬各論155L. 抗てんかん薬各論 18. スチリペントール(STP)
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