2291最新NICUマニュアル 改訂第6版
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50A呼吸器疾患1.人工呼吸器管理法 肺胞虚脱と過膨張を避け,出来るだけ肺に優しい管理を徹底する. 症状やグラフィックから病態を予想し,児にあった呼吸器設定を選択する.目 的 呼吸中枢や肺の未熟性からNICUでは人工呼吸管理が長期的に必要な児が多い.呼吸器のサポートが不足すると,低酸素による影響に加えて,児の呼吸仕事量が増えることで体重増加不良を引き起こし,長期的な発達にも悪影響を与えかねない.しかし一方で過度なサポートは肺損傷を引き起こす可能性がある.このように,NICUでの人工呼吸器管理は,長期的な予後に直結するため,正確な知識と観察力が求められ,児それぞれの病態にあった呼吸器設定が必要となる. 酸素を取り入れ,二酸化炭素を排出する. 呼吸仕事量を減らす. 人工呼吸による肺損傷を予防する.基本事項 (a) 拡散障害と換気障害(図1) 酸素と二酸化炭素は,肺胞上皮細胞・間質・血管内皮細胞を介して移動する(これを拡散という).二酸化炭素と比較して,酸素のほうが拡散しにくいため,肺浮腫などの拡散障害がある症例ではまず動脈血酸素分圧が減少する.また,ガス交換する表面積が減少することも低酸素の原因となる.酸素化不良の対応は,平均肺容量を増加させる(ガス交換ができる面積を増やす)とよく,このために平均気道内圧(mean airway pressure:MAP)を上げるようにする.なお,この他,肺血流減少(肺高血圧,肺塞栓,肺血流減少型の先天性心疾患)や肺内シャント拡散障害(ガス交換がしにくい)ガス交換面積の減少肺内シャント↓低酸素肺胞内血管内肺胞上皮細胞1型結合組織血管内皮細胞気道肺胞血管換気障害(空気の出し入れがしにくい)↓気道抵抗の上昇,コンプライアンスの低下↓二酸化炭素の貯留CO2O2肺血流減少↓低酸素図1 拡散と換気

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