2293スキルアップ!小児の総合診療
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68一次診療:外来で帰せるかどうかの見極め1.初期評価のポイント1)すべての患者にABCDEアプローチ すべての患者にABCDEアプローチを用い,緊急度の評価と安定化を行う〔II-1.発熱 1.初期評価のポイント(p.8)参照〕.2)鑑別疾患はmust rule out疾患から考える ABCDEの評価,安定化の次に診断を考えるが,その優先度としては致死的疾患(must rule out疾患)から想起する.その際もABCDEから考えると想起しやすい. 以下,悪心・嘔吐と下痢は別のプロブレムであるため別々に記載する.① 悪心・嘔吐 ABCDEの異常を伴う悪心・嘔吐の原因には,吐物によるA(気道)の異常,脳腫瘍などの中枢神経障害では呼吸調節障害や吐物の誤嚥によるB(呼吸)の異常,心筋炎ではC(循環)の異常,中枢神経障害では意識障害,嘔吐による経口摂取不良で低血糖といったD(神経学的評価)の異常,アナフィラキシーでは発疹,細菌性髄膜炎では発熱といったE(全身観察)の異常などを考える. 悪心・嘔吐のmust rule out疾患の一覧を表11)に示す.嘔吐の鑑別として心筋炎は重要である2).胃腸炎の診断で心筋炎が見逃されることがあるため,心筋炎を常に鑑別疾患にあげ,胃腸炎だろうと思ってもABCDEの評価をすることと,胃腸炎に少しでも合わない点があれば再評価や検査をためらわないことが大事である.② 下痢 ABCDEの異常を伴う下痢の原因には,低血糖や重度の脱水などで意識障害を伴えば舌根沈下によるA(気道)の異常,嘔吐を伴えば誤嚥によるB(呼吸)の異常,下痢による脱水ではC(循環)の異常,腸重積や溶血性尿毒症症候群(hemolytic uremic syndrome:HUS)による意識障害といったD(神経学的評価)の異常,細菌性腸炎では発熱といったE(全身観察)の異常などを考える. 下痢のmust rule out疾患の一覧を表23)に示す.2.診察・検査1)診察 病歴聴取は,嘔吐の性状(血性,胆汁性)・回数,下痢の性状(色:血便,白色),悪心・嘔吐・下痢以外の症状(発熱,咳嗽,鼻汁,頭痛,嚥下時痛,胸痛,腹痛,関節痛など),シックコンタクト,アレルギー,内服歴,既往歴,予防接種歴,動物接触,渡航歴,生ものや井戸水の摂取を,鑑別疾患を想起し絞りながら行う.漫然と聴取すると重要な情報をきき漏らすことがある.鑑別疾患なくして,病歴,身体所見,検査はなし,である. 身体所見は主訴と病歴から想定される鑑別疾患を中心に,全身の診察を行う.頭部打撲痕,乳児の頭部所見であれば大泉門の膨隆・陥没,眼球の陥没,中耳炎の鼓膜所見,涙の欠如,口腔内の乾燥,Ⅱ「症状・徴候別」総合診療の実際悪心・嘔吐・下痢9

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