2295原発性免疫不全症候群診療の手引き
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合免疫不全との違いは,免疫系以外の症候,異常を伴うかどうかである. Wiskott‒Aldrich症候群(WAS),Ataxia‒Telean-giectasia(毛細血管拡張性運動失調症,A‒T),Bloom症候群,Nijmegen症候群,Cartilage‒hair hypopla-sia,高IgE症候群,DiGeorge症候群(DGS),ICF症候群,CHARGE症候群,先天性角化不全症(DC),免疫不全を伴う無汗性外胚葉形成異常症などが代表的疾患である.原因,病態が異なる疾患が含まれているが,特徴的な症候が診断に役立つためにTable 2としてまとめられたものである.なお,ほとんどの疾患が複合免疫不全症を呈する.Table 3:抗体産生不全症 血清IgG,IgA,IgMが,年齢別平均値‒2 SD以下の条件を満たすものを無または低ガンマグロブリン血症とする.X連鎖(ブルトン型)無ガンマグロブリン血症(XLA),分類不能型免疫不全症(Common variable immunodeficiency;CVID),AID欠損症,UNG欠損症,活性化PI3K‒δ症候群(Acti-vated PI3K‒δ症候群;APDS),IgGサブクラス欠損症などが代表的疾患である. XLAはX染色体上のBTK(Bruton’s tyrosine kinase)遺伝子異常によって起こり,プレB1細胞からプレB2細胞への分化が障害され,末梢血B細胞が欠損する.AID(Activation‒induced cytidine deaminase)やUNG(Uracil DNA glycosylase)欠損による免疫不全症は,免疫グロブリンのクラススイッチ機構に欠陥があり,IgMを産生できるが,IgG,IgA,IgEを産生できない疾患である.CVIDは一般には原因が特定できていない低ガンマグロブリン血症の総称である.CVIDとされていた疾患の中から,ICOS,TACI,BAFF‒R,CD19,CD20などの遺伝子異常が見つかっている.CVIDの中には細胞性免疫障害を呈する疾患があり,かつ加齢と共に細胞性免疫障害が明らかになってくる場合もある.複合免疫不全との鑑別,複合免疫不全への移行が管理上重要である.Table 4:免疫調節障害 キラーT細胞やNK細胞の感染細胞などの排除機構の障害により免疫反応の制御異常が起きたり,免疫調節障害により自己抗体産生をきたす疾患を含む.Chédiak‒Higashi症候群(CHS),家族性血球貪食リンパ組織球増殖症(Familial hemo-phagocytic lymphohistiocytosis;FHL),X連鎖リンパ増殖症候群(X‒linked lymphoproliferative syn-drome;XLP),自己免疫性リンパ増殖症候群(Autoimmune lymphoproliferative syndrome;ALPS),APECED,IPEXなどが含まれる. Chédiak‒Higashi症候群(CHS)は,好中球,NK細胞の形態・機能に欠陥があり,部分白子症で淡い頭髪をもつ.好中球,NK細胞における巨大顆粒が特徴であり,診断に重要である.原因遺伝子はLYSTである. FHLにはタイプ1から5まである.FHL1の原因遺伝子は不明である.FHL2はPerforin欠損症で,原因遺伝子はPRF1である.パーフォリンは細胞融解分子であり,キラー細胞やNK細胞が標的細胞を融解する際に放出する.FHL3はMunc13‒4(UNC13Dともよばれる)の異常である.UNC13‒4は細胞融解分子の形成,移送に必要である.FHL4はSyntaxin 11の異常である.STX11は融解分子の放出に重要である.FHL5はSTXBP2(Munc 18‒2)の異常である.STXBP2も融解分子の放出に重要である.FHLでは,融解分子の欠損や,移送,放出障害により,ウイルス感染細胞などを融解することができず,代償的にIFN‒γが大量に産生され,血球貪食症候群を起こす. XLPは劇症型EBウイルス感染症を起こす.XLP1はSH2D1Aの欠損により起きる.SH2D1Aは細胞内シグナル伝達のアダプター分子である.XLP2はXIAP欠損により起きる.XIAPはアポトーシス抑制に関与している分子である.XLP2は,炎症性腸疾患や反復性血球貪食症候群を呈することも多い. ALPSはFAS系の異常により,アポトーシスが誘導できず,リンパ増殖性疾患をきたす.CD4‒CD8‒のDouble negative T細胞の増加が特色である.ALPS1はアポトーシスを誘導するFAS分子の異常であり,原因遺伝子はTNFRSF6である.ALPS2はFASリガンドの異常であり,原因遺伝子はTNFSF6である.ALPS3は,FASのアポトーシス誘導シグナル伝達に関わるCASP10の異常である.ALPS4は同様にFASのアポトーシス誘導シグナル伝達に関わるCASP8の異常である.ALPS5は4Ⅰ 総論

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