2300小児腎臓病学 改訂第2版
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総論第4章検査・診断法9遺伝子診断遺伝性腎疾患における遺伝子診断においては,近年の次世代シークエンサーの登場により,労力およびコストが大幅に削減された.それに伴い,これまで診断されてこなかった遺伝性腎疾患が非常に容易に診断できる時代となった.本項においては遺伝性腎疾患における遺伝子診断の基本的概念および方法につき解説する.1原因遺伝子の同定方法遺伝性疾患において,その原因遺伝子の同定方法としては,従来は同一疾患の多数の家系を集積し,その患者および家族のゲノムDNAを用いて家族間の連鎖解析を行うことで責任部位を同定するポジショナルクローニングとよばれる手法が一般的であった.ところが最近は,次世代シークエンサーの登場により,ゲノムDNA上の蛋白をコードしている領域すべてを網羅的に解析するWholeExomeSe-quence(WES)により,ゲノムDNA上にコードされている20,000個以上の遺伝子のすべてのエクソン領域の配列の解析を行い,その疾患の原因遺伝子を同定する方法が主流となった.それにより,新規の遺伝性腎疾患責任遺伝子が次々と同定されるに至っている.最近,日本からも同手法により,家族性FSGS新規責任遺伝子NUP107が同定された1).2遺伝子の役割遺伝子から特異的蛋白が形成される過程を図1に示す.ゲノムDNA配列から転写およびスプライシングによりmRNAが生成され,mRNAから翻訳の過程において各3塩基に相補的な一つのアミノ酸が運搬され,それらが連なって作成される蛋白が遺伝子特異的蛋白となる.3遺伝子変異とは遺伝子変異には,塩基の置換はあるもののアミノ酸の変異を伴わないサイレント変異や塩基の置換によりアミノ酸の変異は伴うものの蛋白の構造に大きな影響を及ぼさず病気の原因とはならない遺伝子多型(SNP)も含まれるが,1塩基置換,欠失,挿入などの変異に伴い産生される蛋白の構造に異常を生じる場合,病気の原因(pathogenicvariant)となる.遺伝子診断においては,pathogenicvariantを同定することを目的とし,遺伝子解析を行う.4遺伝子診断の手法染色体および遺伝子の主な検査法を図2に示す.染色体レベルの異常にはG-banding法,G-banding法では検出できないcopynumbervariationの検出にはFISH法,アレイCGH法,サザンブロット法や,MLPA法,遺伝子の塩基単位の変異の検出においては,シークエンス法などを行う.遺伝子診断においては一般的にゲノムDNAを用いたシークエンス法により患者における塩基配列を決定し正常配列と比較することで変異を同定する.シークエンス法には従来のSanger法と次世代シークエンサーによるシークエンス法がある.1)Sanger法塩基配列を決定したい領域に関し,まずはprimerを作成しPCR法による目的配列を含む領域の増幅を行う.その後,primer配列を鋳型とし,伸長反応を行いその塩基配列を決定する.つまり,Sanger法においてはPCR増幅を行った領域の配列のみ決定することが可能である.9遺伝子診断第章検査・診断法4135
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