2300小児腎臓病学 改訂第2版
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を保つ蛋白,糸球体あるいは糸球体基底膜の発育・形成に関与する蛋白などであることが知られている3).2)病態基本病態は,何らかの液性因子や遺伝子変異に伴いスリット膜をはじめとする蛋白尿漏出防止機構が破綻し,高度蛋白尿とそれに伴う低蛋白血症が生じることである.浮腫形成の機序は,低蛋白血症による血漿浸透圧低下に伴う血管内の水分の間質への移動と集合管におけるナトリウム(Na)再吸収亢進による.軽度であるが,潜在的な糸球体濾過量の減少も関与する.Na再吸収の亢進は,集合管におけるNa+-K+-ATPaseの活性亢進と循環血漿量の減少によると推測されているが,前者を起こす因子は判明していない.尿中に喪失する物質は,アルブミン(Alb)に加え脂質代謝や凝固線溶に関連する諸因子,g-グロブリンなども含まれる.その結果生じる低血漿浸透圧は,肝臓でこれらの成分の産生亢進の刺激となり,凝固系および脂質系にも異常をきたす.3診断1)臨床徴候●a主要徴候初発症状は浮腫,尿量減少が多い.浮腫の形成には重力が影響するため,朝は眼瞼に強く,午後から夕方は下肢や陰部に強い.腸管浮腫や血流不全による腹痛,下痢,嘔吐,膨満感や食思不振などの腹部症状も多い.急激な発症の際は,循環血漿量が急激に低下し,低血圧,まれにはショックを引き起こすこともある.高血圧を示す際は,急性腎不全の合併や巣状分節性糸球体硬化や慢性糸球体腎炎の可能性を考慮する.また,胸水,腹水,極度の全身性浮腫を伴った状態をアナサルカ(anasarca)とよぶ.2)合併症合併症としては,感染症,血栓症,急性腎不全が重要である.●a感染症IgGの低下,特異的抗体産生の低下,ステロイドや免疫抑制薬の使用により感染症の頻度が増加する.上気道感染症,肺炎,胃腸炎,尿路感染症,腹膜炎などの発症に注意すべきである.細菌感染症では,IgG2低下による肺炎球菌感染が増加し,時に重症化するため,アメリカでは7価または23価の肺炎球菌ワクチン接種が推奨されている.また,毎年のインフルエンザワクチンの接種も推奨されている.また,少なくともステロイドや免疫抑制薬を使用していないネフローゼ症候群患者については,現在わが国で実施されている定期接種はいずれも有効かつ安全に接種可能であると考えられる.●b血栓症凝固系の異常の他,血液濃縮,浮腫による運動量減少,感染などが原因となる.血栓症は2〜3%という報告もあるが,潜在的な血栓症はもっと多い可能性が示唆されている.動脈より静脈血栓症が多い.深部静脈,腎静脈,脳静脈洞,肺血栓症が多い.●c急性腎不全脱水や急激な発症に伴う腎前性の循環血液量の減少および高濃度の蛋白尿により尿細管内に形成された塞栓による可能性が示唆されている.急性腎静脈血栓症によっても生じる.3)検査ネフローゼ症候群の診断には,表2の定義を用いるのが一般的である.●a臨床検査高度蛋白尿が認められる.微小変化型ネフローゼ症候群でも軽微な血尿が認められることがあるが,肉眼的血尿を認めることは極めてまれである.血液検査では,総蛋白,血清Albの低下を認める.免疫グロブリンはIgGが低下するが,IgM,IgEは上昇する.脂質系は,総コレステロールおよび中性脂肪,アポ蛋白,リポ蛋白の上昇を認める.凝固系は,X,Ⅺ,Ⅻ因子,AT-III,アンチトロンビン,プロテインS,プラスミノゲンの減少,V,VII,VIII,X,因子,フィブリノゲン,プロテインCの増加がみられる.血小板凝集能は亢進し,時に血小板数は増加する.一般的に腎機能は正常だが,急激な発症・再発や脱水を伴う場合は,BUN,血清クレアチニン,尿酸値が上昇することもある.鑑別診断のために,血清補体価,C3,C4も調べ,低下があれば,膜性増殖性糸球体腎炎,急性糸球体腎炎,ループス腎炎を疑う.●b腎生検の適応と組織像発症時に,①持続的血尿,肉眼的血尿,②高血圧,腎機能低下,③低補体血症,④1歳未満のような臨床所見を認める場合には微小変化型以外の組織型の可能性が考えられ,腎生検で組織型を確定した後,治療方針を決定すべきである.上記のような所見がない場合には,微小変化型である可能性が高く,腎生検を行わずに経口ステロイド薬を開始することが第1章糸球体疾患220
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