2300小児腎臓病学 改訂第2版
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多い.また,後述のごとくシクロスポリンの長期投与を行う場合には,定期的(2〜3年ごと)な腎生検による慢性腎毒性の有無の確認が必要である.小児の特発性ネフローゼ症候群の組織型は,80〜90%が微小変化型ネフローゼ症候群(びまん性メサンギウム増殖も含む),5〜10%が巣状分節性糸球体硬化であり,残りを膜性腎症,膜性増殖性糸球体腎炎などが占める.微小変化型ネフローゼ症候群の組織像は,光学顕微鏡上はほとんど変化を認めないminorglomerularabnormalitiesであり,メサンギウム細胞増殖や係蹄壁の異常は認められない.蛍光抗体法でも免疫グロブリンや補体成分の沈着は認められない.電子顕微鏡のみにて,糸球体上皮細胞の足突起の消失と癒合(footprocesseffacement/fusion)を認める.巣状分節性糸球体硬化の組織像は,一部の糸球体(巣状)に分節状の硬化を認めることが特徴であるが,硬化病変を有する糸球体比率が高いもの,尿細管委縮や間質の線維化などの尿細管間質病変が進行しているものの予後は不良である.4臨床経過・予後ネフローゼ症候群は,薬剤,とくに経口ステロイド薬に対する反応性によって病型分類され,治療法選択や予後推定に重要である.小児の特発性ネフローゼ症候群はステロイド投与により80〜90%は完全寛解となり,ステロイド感受性ネフローゼ症候群とよばれる.一方,残りの10〜20%はステロイド投与にもかかわらず蛋白尿が持続するステロイド抵抗性ネフローゼ症候群である.ステロイド感受性ネフローゼ症候群の25〜30%の症例は,初回のアタックのみで,その後は再発しない.治療終了後2年間再発しない場合には,その後,再発する可能性は低いと考えられる.10〜20%の症例は,初回のステロイド治療終了数か月後に再発するが,その後,ステロイド感受性ネフローゼ症候群の再発を3〜4回繰り返して治癒にいたることが多い.残りの約50%(ネフローゼ症候群全体の30〜40%)の症例は,ステロイドの減量や中止に伴って頻回に再発を繰り返す頻回再発型ネフローゼ症候群となる.ステロイド依存性ネフローゼ症候群は,頻回再発型ネフローゼ症候群の重症型であり,その60〜70%を占めると考えられる.頻回再発型あるいはステロイド依存性ネフローゼ症候群の治療として,シクロスポリン,シクロホスファミド,ミゾリビンのいずれかが用いられることが多いが,これらの薬剤を用いても頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合を難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群とよぶ.ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群では,種々の免疫抑制療法に反応して寛解にいたる場合には腎予後は比較的良好であるが,治療に反応せずネフローゼ状態が持続する場合を難治性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群とよび,組織学的には巣状分節性糸球体硬化を呈することが多く,腎不全に進行する可能性がある(図1).5管理・治療日本小児腎臓病学会では,2005年に「小児特発性ネフローゼ症候群薬物治療ガイドライン1.0版」を作成したが,2011年,上記のガイドライン公表より3特発性ネフローゼ症候群第章糸球体疾患1221試験紙法で早朝尿蛋白1+以上または早朝尿で尿蛋白/クレアチニン比0.2g/gCr以上を示し,かつ血清アルブミン2.5g/dLを超えるものネフローゼ症候群不完全寛解試験紙法で早朝尿蛋白3+以上を3日連続して示すもの再発プレドニゾロン連日投与開始後4週間以内に完全寛解するものステロイド感受性初回寛解後6か月以内に2回以上再発,または任意の12か月以内に4回以上再発したもの頻回再発プレドニゾロン治療中またはプレドニゾロン中止後14日以内に2回連続して再発したものステロイド依存性プレドニゾロンを4週間以上連日投与しても,完全寛解しないものステロイド抵抗性表2ネフローゼ症候群の定義難治性ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群ステロイド感受性のうち,標準的な免疫抑制薬治療では寛解を維持できず,頻回再発型やステロイド依存性のままで,ステロイド薬から離脱できないもの難治性頻回再発型/ステロイド依存性ネフローゼ症候群試験紙法で早朝尿蛋白陰性を3日連続して示すもの,または早朝尿で尿蛋白/クレアチニン比0.2g/gCr未満を3日連続して示すもの完全寛解高度蛋白尿(夜間蓄尿で40mg/時/m2以上)または早朝尿で尿蛋白/クレアチニン比2.0g/gCr以上,かつ低アルブミン血症(血清アルブミン2.5g/dL以下)ステロイド抵抗性のうち,標準的な免疫抑制薬治療では完全寛解しないもの
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