2303シェーグレン症候群診療ガイドライン2017
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32 本CQのアウトカム(outcome)として,診断率の向上,治療方針の決定,病態の把握,有害事象,口腔乾燥症状との相関が挙げられていたが,この推奨を作成するにあたり,シェーグレン症候群(Sjögren’s syndrome:SS)患者に対する,診断・病態把握について,診断率向上を重視し,吐唾法,サクソンテスト,ガムテスト,口唇腺生検,耳下腺部分生検についてシステマティックレビュー(system-atic review:SR)を行った. その結果,吐唾法,サクソンテスト,ガムテスト,口唇腺生検,耳下腺部分生検はいずれもSSの診断率の向上に寄与すると考えられた.特に,治療方針の決定および病態把握には口唇腺生検が有用であった.いずれの検査も比較的安全とされているが,耳下腺生検については,若干ではあるが顔面神経損傷などの可能性もあり,専門技術が必要であるため,口唇腺生検のみを推奨とした.口腔乾燥症状との相関については明確なエビデンスは存在しなかった.いずれも,観察研究のみでエビデンスの総括はエビデンスの強さD(非常に弱い)であった. 以上より,SSの診断,治療方針の決定に有用な口腔検査としては吐唾法,サクソンテスト,ガムテスト,口唇腺生検が最も有効な方法と判断した.これらの検査は,厚生省改訂診断基準(JPN)(1999年)およびアメリカ・ヨーロッパ改訂分類基準(AECG)(2002年)にも採用され,広く認知されている. いずれの検査も保険適用されており,患者の経費増額などの負担はないと考えられる. 12本の観察研究(5つの横断研究1~5),6つのコホート研究6~11),1つの症例集積研究12)を対象にSRを行った.メタアナリシス(meta‒analysis)の対象となる研究はなかった. ガムテストに関して,3つの研究1,2,5)でSS診断の感度83.3~86.7%,特異度79.4~86.8%,安静時唾液分泌量(吐唾法)に関して,3つの研究2,5,8)で感度64.6~78.6%,特異度49.7~79.4%,口唇腺生検に関して,3つの研究4,8,10)で感度78~83.5%,特異度82.3~100%,耳下腺生検に関して,1つの研究10)で感度78%,特異度86%であった.サクソンテストの感度,特異度のデータは得られなかったが,1つの横断研究1)でガムテストとサクソンテストは有意に相関したD. 1つの後ろ向きコホート研究6)で,一次性SSでは口唇腺生検におけるfocus score(FS)≧3は非ホ推奨作成の経過5-4SRレポートのまとめ4-10診断,治療方針の決定に有用な口腔検査は何かCQ 1推奨の強さ強い:「実施する」ことを推奨する●SSの診断,治療方針の決定に有用な口腔検査としては吐唾法,サクソンテスト,ガムテスト,口唇腺生検を推奨する.推 奨推奨提示5-3
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