2305ハイパーサーミア
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A.基礎篇1 なぜ,ハイパーサーミアは癌に効くのか? ~In vitroでの研究から~2 タンパク質の熱変性 タンパク質が,生体を形作り代謝を担う酵素として生命現象に必須な機能を発揮するためには,その立体構造が鍵となる.そのタンパク質が温熱に曝されるとタンパク質内の原子・分子間結合の多くが破壊され,立体的な高次構造が変化し,タンパク質は凝集する.このタンパク質の熱変性とよばれる現象は,生卵からゆで卵になる現象(図3)としてよく知られている.また,タンパク質が熱変性で立体構造が壊れるのみならず,損傷を受けなくても温熱によるタンパク質の機能障害がみられることもある. 脂質の熱変性 脂質はタンパク質とともに生体膜の主要成分である.脂質二重層の生体膜は,外界と細胞を区切り,外部情報の処理や物質交換,各小器官の構成などに重要な働きを担っている.温熱によるラジカルを介して,脂質は酸化され過酸化脂質が生成される.過酸化脂質は細胞内で連鎖的にラジカルを発生させて核内のDNAを傷つける.とくに脂質成分の多い生体膜で過酸化脂質が生成されやすく,その結果として生体膜の構造が変化し流動性が上昇する.この変化と生体膜に含まれるタンパク質の熱変性が合わさって,温熱に曝されると膜損傷を引き起こすと考えられる.癌細胞内分子への障害1•癌細胞に対する温熱処理の殺細胞効果については,加温温度依存的・加温処理時間依存的に,癌細胞の生存率が低下することが知られている(図1).•ハイパーサーミアの細胞レベル,あるいは分子レベルでのターゲットは細胞内タンパク質,細胞内脂質,DNAと考えられるが,ここではそれぞれについて概説する(図2).Point ! 加温による癌細胞生存率図110041.5℃42.5℃1.010-110-210-310-410-543℃43.5℃44℃44.5℃45.5℃46.5℃42℃0200処理時間(分)300400500生存率
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