2309稀少てんかんの診療指標
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第2章 疾患の特徴と診療指標64診断のポイント 徐波睡眠(ノンレム)期に広汎性棘徐波が持続性に出現し,焦点発作や全般化発作を伴い,認知機能の選択的もしくは全般的退行を生じる小児期の病態である(図1).ノンレム期に持続性に出現する両側広汎性の棘徐波の割合(棘徐波の出現持続時間/ノンレム睡眠時間:棘徐波指標)は,85%以上が古典的な定義である.しかし85%以下でも認知機能の低下をきたす症例があるため,棘徐波指標を下げた報告も多い.棘徐波指標値の算出方法についても必ずしも一定しているわけではないが,自然睡眠開始後1時間以内の連続する5分間を無作為に抽出し,2秒間以上棘徐波が出現しない場合を棘徐波出現なしとして棘徐波指標を算出している報告もある.棘徐波指標は85%以上を典型例とし,それを下回る非典型例では数値を記載する.50%以上を本症候群に該当するとして,指標値と臨床症状との相関を幅広く検討してみることは意味があろう.1.疾患の特徴1)年齢:てんかん発作の発症は2か月~12歳まで様々で,4~5歳にピークがある.2)疫学:小児てんかんの0.2~1.0%との報告があるが,定義が種々であり,調査手法の不十分さも相まって確かなデータはない.3)臨床発作型:稀発の睡眠中の焦点性または全般化発作(片側または両側性の間代発作,強直間代発作)で発病することが多く,覚醒中に欠神発作やてんかん性陰性ミオクローヌスを認める.強直発作はみられない.4)てんかん発症前の発達:発症前の神経心理学的機能と運動機能は,基礎疾患のない患者では正常が多い.基礎疾患のある場合は,基礎疾患に応じた合併障害がある.5)運動障害・高次脳機能障害:徐波睡眠期持続性棘徐波continuous spike-waves during slow wave sleep (CSWS)出現後より,知能の低下(発症前より低下がある場合はさらに低下),言語障害,時間・空間の見当識障害,行動変化(多動,攻撃性,衝動性),注意力低下,意志疎通困難,学習障害,運動失調を含む運動障害,構音障害,嚥下障害等がみられる.障害のパターンは患者によって異なり,異常波の局在に関連すると考えられている. 2.鑑別診断 睡眠時に広汎性の棘徐波が持続する症候群の臨床・脳波特徴を表1に掲げた.CSWSを示すてんかん性脳症を,いくつかの症候群(非定型良性部概 念 小児期にノンレム睡眠期に広汎性の棘徐波が持続する脳波所見を示し,焦点発作または全般化発作,欠神発作を認める.国際抗てんかん連盟(ILAE)の分類では徐波睡眠期持続性棘徐波 continuous spike-waves during slow wave sleep (CSWS)を示すてんかん性脳症(epileptic encephalopathy with continuous spike-waves during slow wave sleep)という名称が採用されている.認知機能の低下,行動の変化(多動・衝動性)などがみられることからESES(electrical status epilepticus during slow wave sleep)脳症あるいはESES症候群ともいわれる.第2章 疾患の特徴と診療指標1 てんかん症候群EPILEPSY徐波睡眠期持続性棘徐波を示す てんかん性脳症1-9

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