2311抗血栓薬クリニカルクエスチョン100 改訂第2版
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Q51 冠動脈疾患に対して,どのような場合に抗血小板薬を2剤使えばよいでしょうか?Q52 抗血小板薬を2剤にすると,出血助長効果はどのようになりますか? 77Ⅹ抗血栓薬併用スピリン単独群と比較してアスピリンとクロピドグレル併用群で有意に低下した(7.3% vs. 8.8%,ハザード比0.83). PEGASUS-TIMI54試験4)では,1~3年前の心筋梗塞の既往のある患者21,162例をDAPT継続(チカグレロル 90 mg 2回/日もしくは60 mg 2回/日),アスピリン単独の2群にランダム化比較した.中央値33カ月間の追跡期間で,心血管死,心筋梗塞,脳卒中の複合エンドポイントはDAPT継続群で有意に少ないが(90 mg群7.85%, 60 mg群7.77%,プラセボ群9.04%.90 mg:ハザード比 0.85;95%信頼区間 0.75-0.96,p=0.008, 60 mg:ハザード比 0.84;95%信頼区間 0.74-0.95,p=0.004),大出血は有意に増加した(90 mg群2.60%, 60 mg群2.30%,プラセボ群1.06%.90 mg:ハザード比 2.69;95%信頼区間1.96-3.70,p<0.001, 60 mg:ハザード比 2.32;95%信頼区間 1.68-3.21,p<0.001). チカグレロルに関しては,日本の診療のなかでの位置づけは欧米と異なっており,使用する機会が限られることに注意が必要である(Q12参照).文献 1)Antithrombotic Trialists' Collaboration:Collaborative meta-analysis of randomised trials of antiplatelet therapy for prevention of death, myocardial infarction, and stroke in high risk patients. BMJ 2002;324:71-86. 2)Bhatt DL, et al.:for CHARISMA Investigators. Clopidogrel and aspirin versus aspirin alone for the prevention of atherothrombotic events. N Engl J Med. 2006;354:1706-1717. 3)Bhatt DL, et al.:for CHARISMA Investigators. Patients with prior myocardial infarction, stroke, or symptomatic peripheral arterial disease in the CHARISMA trial. J Am Coll Cardiol 2007;49:1982-1988. 4)Bonaca MP, et al.;PEGASUS-TIMI 54 Steering Committee and Investigators:long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015;372:1791-1800.(金 基泰)抗血小板薬を2剤にすると,出血助長効果はどのようになりますか?52重篤な出血性合併症が2倍近くに増加します.特に脳出血は高血圧が関与しているため,積極的な降圧治療が必要です.  MATCH試験では,18カ月間にアスピリン単剤で1.3%,アスピリン+クロピドグレル併用で2.6%に重篤な出血性合併症が発生した1).わが国の観察研究であるBAT研究でも,脳卒中や心疾患の既往のために抗血栓薬を内服中の4,009例を追跡し,年間の重篤な出血性合併症は抗血小板薬単剤で1.21%,抗血小板薬2剤併用で2.00%,ワルファリン単剤で2.06%,ワルファリン+抗血小板薬併用で3.56%に発生した.いずれも併用により重篤な出血性合併症が多く発症することを明確にし,単剤に比べ2倍近い危険性を伴うことが報告された.また,抗血小板薬と抗凝固薬併用の出血性合併症も抗血小板薬単剤の2倍近くになることも示された2)(Q42).BAT研究では出血性合併症発症例のうち脳出血発症例の診察室血圧,特に最終診察時の血圧が高値であることが報告された3).その結果をもとに,抗血小板薬内服患者の血圧は130/81 mmHg以下のコントロールが提唱されている.

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