2311抗血栓薬クリニカルクエスチョン100 改訂第2版
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94 Chapter Ⅻ脳梗塞急性期脳梗塞急性期の抗血栓薬はどのように選択すべきですか?63できる限り入院時に病型診断を行い,その病型に応じた抗血栓療法を開始します(図). 心原性か否か? 基本的にはQ8やQ10と同様に,病型に基づいて抗血小板薬か抗凝固薬かの選択を行う.しかし,入院時点では病型診断が困難な場合もある.慢性期とは異なり出血性梗塞の危険性を伴う.そこで急性期には,まず少なくとも心原性か否かを判別し,非心原性ではアスピリンを速やかに開始,心原性では出血性梗塞に注意しながら抗凝固薬を開始する.非心原性脳梗塞 脳梗塞急性期における抗血栓療法の効果は,アスピリンの有効性が示されているのみである.次項Q64で述べるとおり,非心原性脳梗塞が9割を占める患者集団における急性期の「脳卒中再発または死亡」の頻度は,アスピリン群8.2%,対照群9.1%で,絶対リスク低下は0.9%であった.そのうち非心房細動例のみではアスピリン群6.7%,対照群7.8%であった.しかし,心房細動例ではそれぞれ18.2%および18.7%と差はなかった1).この唯一示されたアスピリンの効果は,主にラクナ梗塞とアテローム血栓性脳梗塞における急性期効果と考えてよい.そのため,まずは心原性か否かを速やかに鑑別し,非心原性脳梗塞と判断されれば,またはその可能性が高ければ,早期に抗血小板薬を開始する(Q64参照).心原性脳塞栓症 心原性脳塞栓症急性期に使用されることの多いヘパリンは,出血性梗塞の増加による効果相殺のため,少なくとも48時間以内に開始することの有効性は示されていない2).しかし再発予防のため,いずれかの時点で抗凝固療法を開始する必要があるが,開始時期は明確に図 病型に基づく抗血小板療法NoYes心房細動など塞栓源心疾患あり心原性脳塞栓症ワルファリン(または直接抗凝固薬)NoYes脳梗塞巣の上流に狭窄ありアテローム血栓性脳梗塞抗血小板薬NoYes穿通枝領域に梗塞病巣ラクナ梗塞 抗血小板薬その他の原因
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