2311抗血栓薬クリニカルクエスチョン100 改訂第2版
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Q63 脳梗塞急性期の抗血栓薬はどのように選択すべきですか? 95Ⅻ脳梗塞急性期されていない(Q65参照).急性期病型診断 入院時点で抗血栓療法を選択する際は,その病態をできる限り明確にして治療法を選択する.脳梗塞の病型は,①ラクナ梗塞,②アテローム血栓性脳梗塞,③心原性脳塞栓症,④その他の脳梗塞に分類される.急性期MRI拡散強調画像(DWI)の特徴は,①は深部穿通枝領域の単発病巣,②は深部穿通枝領域以外の単発または多発病巣で,責任血管に狭窄がある,③は深部穿通枝以外の単発または多発病巣で,皮質病巣であることや複数血管領域に分布することも多い.さらに③は,心房細動や左室壁運動異常などの塞栓源心疾患があれば心原性脳塞栓症と診断できる.上述のとおり①と②では速やかに抗血小板薬を開始し,③では抗凝固薬を選択する.④では凝固異常症など以外は抗血小板薬を開始する. しかしながら心原性脳塞栓症か非心原性脳梗塞かの区別は,入院時点では困難であることも多い.入院時洞調律であっても入院後に心房細動が出現することもしばしばある.入院時に心原性脳塞栓症と診断できなくとも,上述のような病巣分布からその可能性が高いと考えられる場合,当初より抗凝固薬を選択することも多い.さらに心エコーでの左房径拡大,BNP高値,上室性期外収縮頻発などがあれば,潜在する心房細動を疑う.これらの所見が乏しい場合,非心原性脳梗塞と考え,初期治療は抗血小板薬を選択する.各種検査を行っていくなかで病型診断を変更し,抗血栓療法を変更することもしばしばある.▶プラクティス 心電図で心房細動が確認されるかその既往がある場合や,心エコーで左室壁運動異常など塞栓源心疾患があれば心原性脳塞栓症と診断し,出血性梗塞のリスクを考慮して抗凝固療法を開始する(Q65参照).MRAと頚動脈エコーを確認し,上流の責任血管の狭窄があればアテローム血栓性脳梗塞と判断し,抗血小板薬を投与する.穿通枝領域の脳梗塞であればラクナ梗塞と診断し,厳格な降圧治療を行ったうえで抗血小板薬を投与する(Q64参照).これらのいずれも該当せずMRIで皮質病巣を認め,①心電図で発作性期外収縮が頻発している場合,②心エコーで左房径拡大がある場合は心房細動が潜在する可能性を疑い,初期より抗凝固療法を開始することも多い.この場合,心房細動がなければ直接経口抗凝固薬は保険適応外であり,ワルファリンを使用する.その場合も引き続き他の原因検索を行う.文献 1)Chen ZM, et al.:Indications for early aspirin use in acute ischemic stroke:A combined analysis of 40000 randomized patients from the chinese acute stroke trial and the international stroke trial. On behalf of the CAST and IST collaborative groups. Stroke 2000;31:1240-1249. 2)Saxena R, et al.:Risk of early death and recurrent stroke and effect of heparin in 3169 patients with acute ischemic stroke and atrial fibrillation in the International Stroke Trial. Stroke 2001;32:2333-2337.(藤堂謙一)

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