2314脳解剖から学べる高次脳機能障害リハビリテーション入門 改訂第2版
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43高次脳機能障害の診断と評価・対応法第2章B症状・サイン 図1に様々な高次脳機能障害の症状とサインを示した.高次脳機能障害は,生まれつきの高次脳機能の問題である発達障害やAlzheimer病などによる認知症と同様に,患者がその症状を認識しにくい,自己モニタリングの障害である.したがって,患者や家族が訴える高次脳機能障害の症状は,これらの訴えが少ないから軽症であるとか,訴えが多いから重症であるといった判断は適切ではない.外見から観察される様々な症状が,何らかの脳器質性の病変の存在で説明がつく場合,これを高次脳機能障害とよぶ. 脳損傷者の支援にかかわっていると,症状が回復し,障害に対する認識が深まれば深まるほど,患者の訴える症状が増えてくるということがある.また,自身の障害への認識が深まり,自己モニタリングが可能になると,周囲からの評価が上がり,見た目上,症状が改善しているように感じられることを多く経験する.したがって,これらの高次脳機能障害の症状やサインは,患者の自覚症状だけを聴取するのではなく,家族や周囲の評価も同時に聴取することで,その認識のズレを把握することが必要である. 患者と周囲の障害への気づきが生まれると,この認識のズレがなくなり,生活におけるトラブルも少なくなる.この変化こそが,高次脳機能障害が改善するプロセスといえる.図1高次脳機能障害の症状とサイン相手の気持ちを思いやることができない今自分がいる場所がわからない服をうまく着ることができないその場の雰囲気をつかむことができない左側の食べ物などを見落とす道に迷う人の意見に耳を傾けることができない1つのことにこだわりやすい自分は何でもできると思う人を許すことができない人への気遣いが乏しい注意・集中力がないやる気が起こらない落ち込むことが多い元気がない怒りっぼい人との約束を忘れることがある昨日の食事の内容を思い出せない物を覚えることが難しい字を見ても読めないことがある人の話を聞いても理解できないことがあるポケットから100円玉が取り出せない数字がわからない右と左の区別を間違えることがある物の名前がでてこないことがある人の名前がでてこないことがある言葉の意味がわからないことがある前頭葉頭頂葉側頭葉後頭葉

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