2314脳解剖から学べる高次脳機能障害リハビリテーション入門 改訂第2版
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85脳画像でおさえるべきポイント第3章どの小脳症状をきたしやすい31). 小脳性無言症は術後に約24 %に認め,無言症のあとに,認知機能低下,情動不安定や失調をきたすことが知られている32,33). 高次脳機能障害をきたしやすい34,35). 認知機能低下の原因は,治療前要因として,腫瘍の増大,水頭症,脳幹やその周囲への圧迫や浸潤が,治療後には手術,放射線,化学療法などが複合した様々な要素や小脳性無言症などが考えられている32,36~39).■ 胚細胞腫瘍 好発部位は松果体部が最も多く,次いでトルコ鞍上部・神経下垂体部で,まれに基底核部にも発生する.その発生部位により症状は異なり,松果体部では中脳水道狭窄による水頭症や複視,垂直性上方注視麻痺(Parinaud徴候)やArgyll Robertson瞳孔をきたす.トルコ鞍上部では,尿崩症,下垂体前葉障害,視力・視野障害を,そして基底核部では緩徐に進行する片麻痺をきたす40). 組織型はジャーミノーマ,奇形腫,卵黄囊腫瘍,絨毛癌,胎児性癌そして混合型で,治療法は組織型により異なる. 長期生存が期待されるジャーミノーマでは,放射線照射後の高次脳機能障害が問題になることがある41). 照射量を減らし,化学療法を組み合わせたことにより,一般対照者と比較して知的機能に有意差がなかったとする報告もある42).■ 頭蓋咽頭腫 頭蓋咽頭管の遺残であるRathke囊から発生し,多くはトルコ鞍上部にみられる.囊胞や石灰化を合併することが多く,囊胞内容液はモーターオイル様の液体である. 症状は視力視野障害の頻度が高く,視床下部,下垂体の症状をきたす頻度も高い.小児では低身長でみつかることもある. 全摘出により予後は良好であるが,再発を繰り返すことも少なくない.小児では成長後の内分泌管理も重要である. 認知機能や性格変化などの高次脳機能障害をきたしやすい.また放射線照射による認知機能への影響は大きいと考えられている43~45).

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